踵骨骨折の特徴について説明します。
受傷機転
高いところから落ちると、踵骨に強い衝撃が加わって骨折を起こすことがあります。脚立、2階の足場、トラックの荷台、などから落ちて受傷するケースが多いです。飛び降りの場合もあります。
身体所見
外見
骨折によって腫れと変形が起こります。とくに踵骨骨折の場合、皮下出血や強い腫脹、水疱などが出ます。この腫脹は、手術の際、合併症を引き起こす一因となりますので、ある程度腫脹が引くまで手術は待機します。
受傷後5日目の踵骨骨折。皮下出血が広がり、水疱ができています。ある程度腫脹が引いてきているため、皮膚にしわが見えてきています。
合併症
足底腱膜の断裂や、腰椎圧迫骨折を合併していることもあります。
骨折のメカニズム (depression type)
踵骨骨折の中でもっとも理解の難しいdepression typeについて説明します。depression typeさえ分かっていれば、他のタイプはその亜型として理解できます。
まず2つに分断
高いところから落ちて床から強い力が加わると、まず、距骨によって踵骨を分断する力が働きます。
片方はさらに3つに分断
分断された踵骨の2つの骨片のうち、前側の骨片は靱帯がたくさんついているため、あまり転位しませんが、後ろ側の骨片は、さらに特徴的な3つの骨片に分断します。
その3つ骨片の次の通りです。
- 上の骨(距骨)に押されて落ち込んだ関節面の骨片
- 上からの圧力で飛び出した外側壁の骨片
- アキレス腱によって上に引っ張られた骨片
3つの骨片に特徴的な症状
これら3つの骨片がずれたまま癒合すると、それぞれに対応する症状を呈します。
- 関節面のフィットの悪さによる痛み
- 押し広がった外側壁が腱を圧迫して起こる腱鞘炎の痛み
- アキレス腱の付いた骨片が持ち上がったまま癒合することによる扁平足の症状
です。
後遺症を残しうるこれら3つの骨片をいかに戻すかが、手術のポイントとなります。
画像所見
レントゲン
まず、関節面のずれかたから、tongue typeかdepression typeかを見分けます。depression typeは上で説明した骨折形、tongue typeは、関節面とアキレス腱付着部が一塊となって舌のような形の骨片になったtypeです。
ほか、つぶれ方の程度を見るためにベーラー角を測ります。
CT
骨折形の詳細は、レントゲンよりもCTによって把握します。
3D-CTでは、立体的に骨折形を把握することができます。関節面はどのくらい陥入しているのか・いくつに粉砕しているのか、外側壁はどのくらい出っ張っているのか、アキレス腱のついた骨片はどのくらい上に持ち上がっているのか、などを見ます。
関節面の評価では、Sandersの分類が有名です。骨折によって後距踵関節面が X 個に分かれていたら Type X (X = 1,2,3,4)、さらに、入りうる骨折線を外から順にA,B,Cと命名し、それらを組み合わせた分類法です。A,B,Cは治療上特に大きな差異はありませんので、Typeのほうだけで呼ぶ専門家も多いです。
診断
骨折を起こしていることはだれの目から見ても明らかですが、患者さんの全身状態と画像所見によるその骨折形から、その後の治療を計画します。