筆者の考案した外脛骨障害に対する内視鏡手術を紹介します。
従来の術式も治療成績は良好ですが、足の軟部組織がうすい部位に皮切をおくため、人によっては愁訴を残す傷になることもありました。内視鏡手術ではそのリスクを軽減しています。
局所麻酔、日帰り手術も可能です。
適応
Veitch Type 2の外脛骨障害。Type 3でも骨性隆起に愁訴のある場合は手術適応になります。
方法
概略
①外脛骨と舟状骨の突出部の近位・遠位に5mm のポータルを作成、②透視下に削るべき骨の周囲を剥離、③分裂部をK-wireを用いて不安定化、④透視下に骨切除、⑤内視鏡下に郭清、する方法です。
準備
・患者さんを仰臥位にします。
・透視や透視モニター、関節鏡モニターは患側の頭側におきます。術者は健側に立ちます。
・ターニケットは準備しておきますが、ほとんどの場合必要ありません。
・足台を用います。
※内視鏡操作で手術台がじゃまにならないよう、足を浮かせておく必要があります。
・外脛骨と舟状骨の突出部をマーキングします。
※マーキングは、直径1.5-2cm 程度の円状になります。この部分を削ることになります。
皮切
・記入した円周の近位斜め上と遠位斜め下(分裂部の延長線上)に2ポータルをおきます。
※近位斜め上の皮切は、正面像での後脛骨筋腱の内側に位置するようにします。
骨膜周囲剥離
・あらかじめマーキングした円形の骨の膨隆部の骨膜を剥離します。
※この部分が切除される部分ですので、あらかじめよく触知しておく必要があります。
※骨膜の剥離にはミネシマアートラインというプラモデル器具が有効です。
線維性結合の不安定化
・2mm K-wireを、徒手的に、遠位ポータルから外脛骨の線維性結合部へと刺入します。
・透視を見ながらK-wireをねじるようにして、結合部を不安定にさせます。
・透視で外脛骨が動くのを確認します。
透視下の骨削り
・遠位ポータルから関節鏡用の径3mmの骨用シェーバーを挿入し、線維性結合部から外脛骨を削っていきます。
※完全に削りきろうとしない、骨片をむやみに分断しない方が、後で内視鏡で見たとき、骨片を見つけやすくなります。
※透視下に完全に削りきろうとすると、骨片が細かくなって残り、最後の仕上げに時間がかかります。
・舟状骨の突出部も削っていきます。
※あらかじめマーキングしておいた骨の膨隆部がなくなることを目安とします。
※正面像で見て、突出部の角が丸くなるようにします。
※底側を削り込みすぎると後脛骨筋腱の付着部が小さくなりますので、注意します。
内視鏡下の郭清
・内視鏡を遠位ポータルから挿入します。削りカスを洗い流します。
※鏡視は、骨を削ってできたスペースによって変わります。舟状骨の削った面、底側の後脛骨筋腱が見えます。
・削りきらないで残しておいた外脛骨の骨片を見つけ、それをさらに削っていきます。
術中レントゲン、閉創
・術中レントゲン(正面像と外旋斜位像)を撮影し、取り残しがないか確認します。
・創は5-0ナイロンで縫合、もしくはステリーストリップでとめて終了します。
後療法
・術後3週間、膝下シーネ固定とします。痛みの範囲内でシーネでの荷重歩行を許可します。
・術後3週後、シーネを除去します。その後はしばらくは、歩くだけの負荷にとどめます。
・術後2か月から軽いジョギングを許可します。
・術後3か月から本格的なスポーツ復帰を許可します。
治療成績
・集計中ですが、現在のところ(術後4カ月以上の9人)、目立った成績不良例は発生していません。
外脛骨切除部の変化
外脛骨を切除した部分には腱様組織が再生します。
1M, 2Mなどはそれぞれ術後1か月後、2か月後を表します。白矢頭は外脛骨を切除した部分を指し、黒矢頭は外脛骨を指しています。Nは舟状骨、Tは距骨です。外脛骨を切除した部分に、だんだんと腱様組織が再生されているのが分かります。