母趾種子骨障害の特徴

母趾種子骨障害

母趾種子骨とは

母趾種子骨とは、足の親指の付け根の関節(母趾MTP関節といいます)の下側に2つある、小さな骨です。種子骨とは、医学用語では腱の中に含まれていて何らかの機能的役割を果たす骨のことを言います。母趾種子骨は、短母趾屈筋腱の中に含まれていて、母趾種子骨を支点として短母趾屈筋の方向を変え、てこの原理で力が母趾に強く伝わるようにする役割を果たしています。

症状

母趾種子骨障害は、母趾種子骨に何らかの痛みがある状態をいいます。母趾種子骨障害になるパターンがいくつかあります。

疲労骨折

母趾種子骨は母趾球にあるため、足を踏んだ時に強い衝撃が加わります。また、母趾種子骨は短母趾屈筋の中に含まれ、始点となって筋の力を効率的に母趾に伝えますので、強いけん引力が加わります。そのため、スポーツなどで繰り返し負荷がかかりすぎると、疲労骨折を起こすことがあります。

疲労骨折というもの自体治りにくい性質があるのに加え、踏み返しの際に負荷がかかるという安静が保ちにくい場所にあることにより、母趾種子骨の疲労骨折は、保存的治療が困難です。

中途半端にくっついている分裂種子骨

種子骨が二つに割れている状態を分裂種子骨といいます。

軟骨がだんだんと骨に置き換わることで、我々は子供の骨から大人の骨へと成長していきます。種子骨は、幼少の時の軟骨の中に、2つの骨に置き換わっていく拠点を持っています。その点を中心にそれぞれ同心円状に骨化をしていき、やがてその2つの骨化部がつながって一つの骨になりますが、その途中で成長が止まり、2つに分かれたままの人がいます。まったく無症状の人も多いですが、中途半端にくっついている場合、そこに微小な損傷が加わり、いつまでも痛みが取れない場合があります。

分裂種子骨の片方が骨折

2つに割れた分裂種子骨の片方が骨折する場合があります。鉛筆のとがった方と丸い方で同じように指を押すと、とがった方が痛いように、同じ力を加えても、接触面積が小さい方が痛くなります。それと同様に、ひと固まりの種子骨よりも2つに割れた種子骨の方が、それぞれにかかる圧力は強くなります。それだけ分裂種子骨では骨折するリスクが高くなります。

身体所見

母趾種子骨に強い圧痛があります。また踏み返したときに母趾種子骨に痛みを感じます。

画像所見

レントゲンでは、母趾種子骨が2つかそれ以上に割れているのが見られます。もともとの分裂種子骨では亀裂部の幅が広い、亀裂部の辺縁がシャープでない、などの特徴があります。一方、疲労骨折では、亀裂部の幅が狭く、辺縁がシャープな特徴があります。

CTでは、さらに詳しく亀裂部の様子を見たり、3D-CT画像を作って、分裂の状態を三次元的に把握したりします。

MRIでは、分裂種子骨の浮腫の状態や壊死に陥っているかどうかなどを見ます。分裂して小さくなっているときは画像の精度が悪く、壊死に見えることも少なくありません。

診断

痛みの部位と画像所見により診断します。鑑別で難しいのは、分裂種子骨に加え、第一中足骨が下がっているために母趾種子骨の地面への押し付けが強いタイプで、種子骨が割れているから痛いのか、種子骨にかかる押し付けの力が強いから痛いのか、判断するのに苦労することはあります。そのような時は、経過や日常生活で痛くなる状況、足裏のタコ、足底圧測定器などで、総合的に判断します。

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