中足骨痛症の手術療法

中足骨痛症

適応

中足骨頭が地面に当たって足底が痛くなるのが中足骨痛症です。中足骨痛症の方の中で、インソールや足の内在筋の筋力トレーニングなどの保存療法を行っても痛みの軽減しない方が手術適応となります。

手術法

Weil法

1985年にアメリカのWeilが考えた方法です。中足骨を短くしながら骨頭を少し持ち上げることにより、中足骨頭の足底圧を緩和します。この方法は比較的簡便で、安定した成績を残せる方法です。

第3中足骨が長いことによる中足骨痛症。Weil法により長さと高さを調整しました。

BRT法

フランスのBarouk、Rippstein、Toullecが2000年に考えた方法です(「Forefoot Reconstruction」という本に載っています)。3人の頭文字をとってBRT法と呼ばれています。中足骨の基部で楔状骨切りを行い、遠位骨片を少し持ち上げてスクリュー固定します。

筆者の方法(BRT変法)

BRT法の問題点

BRT原法は、中足骨の基部で楔状骨切りを行い、中足骨を少し持ち上げる方法で、図で見れば簡単でよさそうな方法に見えますが、技術的にかなりのピットフォールをかかえた手術です。以下がそのピットフォールです。

  • 中足骨のもち上げ幅が調整できない。
  • 中足骨の基部は多くの靱帯が付着しているため、その靭帯がジャマをしてうまく骨片が持ち上がらない。
  • 遠位骨片にスクリューを届かせるためにスクリューを倒して打たなければならないが、中足骨の基部は緩やかに前方に傾斜しているため、骨表面に対するスクリューの角度はかなり急となり、スクリューの根元の固定力が出にくい。

などです。このような術式は、開発者はコツやピットフォールなどをよくわきまえているからうまくできますが、慣れない術者がただ教科書を読んだだけで取り組むと、うまくいかないことが多い術式です。

BRT法からの改善点

そこで筆者は、上記のBRT法のピットフォールを改良した方法を考案しました。改善点は以下の通りです。

  • BRT法では中足骨の基部で楔状骨切りをしているが、この部位は靭帯が多いためにうまく骨片を挙上できないので、靭帯の付着のない中足骨の骨幹部での骨切りにした。
  • BRT法ではスクリュー固定で固定力が出せないので、K-wire固定で安定した固定力が得られるようにした。
  • BRT法では中足骨頭のもち上げ幅の調節ができないので、骨切り後に横アーチをガーゼで形成する方法を考案した。また、K-wireを微妙に弯曲させることで、もち上げ幅を調整できるようにした。

筆者の方法であれば、初めて手術する医師でもうまくできると思います。

筆者の方法。中足骨骨幹部で骨切り、K-wireを通し、それを曲げることで中足骨頭を持ち上げています。

準備

患者さんを仰臥位にします。患肢は立て膝にして、膝下に側板を当て、足部が手術台につくようにします。ターニケットを準備します。術者は患側に立ち、透視や透視モニターは健側におきます。

皮切・展開

目的とする中足骨の遠位1/3を中心とした2-3cmの縦皮切をおきます。2,3本手術をする場合は、中足骨間に皮切をおきます。
※中足骨の配列はなだらかに外側に向けて傾斜していますので、透視では内旋斜位で中足骨間を確認して、正しく中足骨間をとらえるようにします。

腱の真下に骨があることをメルクマールとして、18G針を骨に当て、透視で確認します。
※やみくもに中足骨付近を展開すると、筋膜をやぶって骨間筋が露出し、手術がやりにくくなります。

透視で確認したら、中足骨の遠位1/3の骨膜を縦切開し、骨膜下剥離をします。
※骨膜は縦切開して連続性を保った方が、骨切り後の骨片が安定します。

骨切りと固定

透視で中足骨骨幹部の遠位1/3を確認し、1mmの底を足背側におく楔状骨切りをします。
※骨幹部の真ん中付近で骨切りすると、後でK-wireを遠位骨片髄腔に刺入した際、遠位背側から抜くのが難しくなるので注意します。

遠位骨片をモスキートコッヘルで把持し、骨切り面は皮切から出して、髄腔に1.4-1.6mm K-wireを刺入、そのまま進め、背側から貫きます。

骨片を貫いたら、なるべくその近くで皮膚を貫くよう、皮膚をエレバトリウムで押しながら、K-wireを皮膚から出すようにします。

K-wireの近位端が骨切り部に来るまで引き出したら、次はK-wireを逆行性に、近位髄腔を基部まで進めます。

横アーチの形成

横アーチの中央に、2度折りたたんだ八折りガーゼを当て、テープで固定します。

骨切り部を下に押しながら、皮膚から出たK-wireを持ち上げ、K-wireを骨切り部で弯曲させます。目安は、骨切り部の骨片がK-wireで押し上げられることなく自然に接する位置です。

透視の斜位像を見て、K-wireが曲がり、中足骨頭が持ち上がっているのを確認します。

皮膚から出たK-wireは、短く切ると皮膚に食い込むので(術後の腫脹により)、1cm程度皮膚から離して曲げて切ります。皮膚から出たK-wireは、根元をステリーストリップでとめ、皮膚に食い込まないよう短冊状に細く切ったガーゼを巻いておきます。その上から透明なフィルムを貼ります。

横アーチを作ったガーゼは、術後4週までは取らないようにします。

後療法

術後6週間まで前足部免荷装具を使用します。ピンは術後4週で抜去します。

BRT変法術後。横アーチが形成されています。足背に手術創の跡が見えます。

タイトルとURLをコピーしました