強剛母趾の特徴

強剛母趾

強剛母趾の特徴について説明します。

強剛母趾とは

足の親指の付け根の関節の年齢的な変化によって、親指を反らしたときの痛み反らしにくさなどがおこる疾患です。

症状

・足の親指を反らせると痛くて歩きづらい、反らしにくい
・足の親指の付け根の関節の骨が膨らんでいる

などが主な症状です。

身体所見

外見

足の親指の付け根の骨が足の甲側に出っ張ります。また、関節全体が膨らんだ様子が見られます。

母趾の付け根の関節が膨らんでいます

関節可動域の制限

母趾を反らせる動き(背屈と言います)に制限が見られます。母趾を下に曲げる動きも制限されたり、痛みを伴うことが多いです。

Dananberg テスト

ふつうに母趾を反らせたときの関節可動域と、中足骨を押し上げながら母趾を反らせたときの関節可動域とを比べるテストです。

歩いているときは中足骨に対して地面から突き上げの力が働きますので、このテストで中足骨を押し上げながらの母趾の背屈は、歩いているときの関節可動域を想定しています(下の写真)。

強剛母趾の方は、中足骨を押し上げながら母趾を反らせようとしても、ほとんど反らすことができません。これは、レントゲン上の年齢的な変化がほとんどないときから見られる所見です(下の写真)。

一方で、ふつうに母趾を反らせたときの関節可動域は、初期では大きく、末期ではほとんど反らなくなります。これは、関節症変化そのものが母趾の背屈制限に及ぼす影響を示唆します(上の写真)。

Dananbergテスト(1)。普通に母趾を背屈させます。軽度の背屈制限が見られます。
Dananbergテスト(2)。中足骨を押し上げながら母趾を背屈させると、さらに反らなくなります(背屈0°です)。歩行時にはより母趾が反らしにくくなっていることを示唆します。

画像所見

レントゲン

正面像

関節の隙間が狭く写ります。関節の表面は軟骨がコーティングしていますが、軟骨はレントゲンでは写らないので、関節の隙間の幅によって、どれだけ軟骨が残っているか推し量ることができます。

軟骨がすり減ると、向かい合う骨同士の刺激が強くなり、骨が固くなります。これがレントゲンでは白く写ります。これは軟骨下骨の骨硬化像と言って、強剛母趾のような変形性関節症に特徴的な所見です。

基節骨の内外側(主に外側)に骨棘が張り出します。これは、関節を包む靱帯(関節包)を横に押し広げることとなり、関節の硬さの一因となります。

強剛母趾レントゲン正面像。関節のすきまが狭くなっています(関節裂隙の狭小化)。他の関節に比べて白く写っています(軟骨下骨の骨硬化)。外側に広がる骨棘が見られます。

側面像

立位での側面像を撮影します。

中足骨頭の上には骨棘があり、これは靴に当たって痛い、という症状を出すことがあります。

中足骨軸を見ると、第一中足骨だけ持ち上がっているのがわかります。

強剛母趾レントゲン側面像。中足骨頭の背側に大きな骨棘が見られます。基節骨の基部背側にもとがった骨棘が見られます。

CT

関節の隙間の狭さや骨棘の様子をより詳細に見ることができます。

中足骨頭の上部に大きな骨棘ができています。これは人によって靴に当たる症状を呈します。

基節骨の上縁は骨棘によって鋭くとがっています。足指を反らせたときに中足骨頭に刺さるように当たって痛みの原因になります。

種子骨の辺縁や基節骨の底部にも骨棘ができています。底側の軟部組織の動かしにくさ、すなわち母趾の反らしにくさに影響します。

正面像。関節面の外側に骨棘ができ、外に広がった関節面になっています。基節骨と中足骨の上部に骨棘が見えます。
側面像。中足骨の背側に骨棘が見られます。基節骨の背側にも尖った骨棘が見られます。
底側。基節骨基部や種子骨周囲に骨棘が見られます。

MRI

中足骨頭の真ん中から上1/3にかけて浮腫性変化が見られ、その部分で骨同士が衝突していることが示唆されます。

MRI。T2強調画像。中足骨頭の関節面の真ん中からやや背側にかけて、浮腫性変化が見られます(一般的な画像所見)。この方は基節骨全体にも浮腫性変化が見られます。

診断

身体所見とレントゲンを合わせて、強剛母趾と診断します。