かばいすぎ症候群

その他記事

はじめに

筆者のように足の外科の専門外来をやっていると、数か月~1,2年のあいだ、いろいろな病院に行ったものの診断もはっきりせず、痛みも治まらないために紹介されてくる患者さんがいらっしゃいます。その方たちの一部は普通に診断がつくものもありますが、中には「かばいすぎ」が原因としか思えないものもあります。ここではこの「かばいすぎ症候群(筆者命名)」の特徴について書きたいと思います。

特徴

いくつかの特徴的な所見があります。

①軽微な外傷から発症
②痛みの場所が移る、次々にいろいろな症状が重なってくる
③しびれやむくみを訴えることもある
④足趾を他動的に曲げると痛い
⑤足をぶらぶらと動かすことができない
⑥足首をぐるぐる回すと痛い
⑦腓骨筋腱の痙性があるときもあるが、それだけでは説明がつかない
⑧レントゲン検査で、特記すべき所見がない、長期罹患の時には骨萎縮が見られることもある
⑨MRI検査で、骨髄浮腫が見られることもあるが、症状と一致していない
⓾CRPS (Complex Regional Pain Syndrome)ではない

などです。

病態

下記のような病態が考えられます。

最初は軽微な外傷があったため、それをかばって歩くのは仕方がないことですが、かばって歩くことで、正常な組織への負荷が増え、それが痛みの原因となります。最初の軽微な外傷は治ったものの、かばって歩くくせが抜けないことにより、本来けがをしていない組織への負荷が継続してかかり続け、痛みが引かない状態になります。すると、次にはその部位をかばって歩くために、また別の部位への負荷が増えることとなり、今度はその部位が痛くなる、ということを繰り返します。

そのようなことが続くことにより、所見としては主に筋緊張(痙性)による痛みが見られます。

治療

①足趾を他動的に(手を使って)曲げる
②足首をぐるぐる回す体操をする
③足がぶらぶらできるようにする
④かばって歩かないように心がける

などを行います。これらは最初は痛みを伴いますが、続けているとだんだんと痛みが減ってきます。

多くの場合はこれだけでほとんど症状が軽快します。症状が大部分軽減した後に改めて診察すると、足関節の不安定性が顕在化してくる場合もあります(はじめは筋の痙性が強くなっているため、不安定性の症状が前面に出てきません)。