変形性足関節症の手術療法について説明します。
手術法の概略
病期に対する手術法の適応に関しては各病院で様々ですが、筆者のところではstage 3(関節の内側の軟骨がなくなっているタイプ)では矯正骨切り術、stage 4(関節全体の軟骨がなくなっているタイプ)では関節固定か人工関節を行っています。
矯正骨切り術
関節の傷んだ箇所が一部に限局しているとき、骨切りによって傷んだ箇所への負荷を減らすことで、痛みを減らすことが期待できます。
方法
骨切りの方法に関しても各病院で様々ですが、筆者は下の写真のような方法を考案して手術を行っています。脛骨と腓骨を骨切りをし、腓骨(荷重軸と平行です)に対して距骨の関節面が垂直になるよう矯正します。術前の写真(左)では、腓骨の軸と距骨の関節面が垂直でないため、足部が内向きに倒れていましたが、術後の写真(右)では、腓骨の軸と距骨の関節面が垂直となり、足部がまっすぐになっているのがわかります。

適応
stage 3(関節の内側の軟骨がなくなり、脛骨と距骨が接しているタイプ)の変形性足関節症です。
特徴
内向きに倒れている足部がまっすぐになり、足裏全体で体重を支えられるようになります。
体重を支える関節面が、内側のみから関節全体へと広がるため、痛みが減ります。内側のすり減った軟骨はそのままなので、原理的には痛みがかなり残っていてもおかしくはないのですが、ほぼすべて症例で満足のいく痛みの軽減が得られています。この点は足の外科学会でもときどき話題になる不思議な点ですね。
また、たとえ痛みの引きが十分でなく、人工関節や足関節固定に移行せざるを得ない場合でも、骨の配列がよくなっているため、これらの手術を容易に行うことができます。
このタイプの変形性足関節症に人工関節や足関節固定を行っている病院もありますが、筆者はこの矯正骨切り術で十分だと考えています。
人工足関節置換術
傷み具合が激しい関節(stage 4)は、関節そのものの状態を変える関節固定術や人工関節の必要がでてきます。
方法
傷んだ関節を人工物に置き換えます。私のところでは、京セラのTNKという機種の人工関節に、人工距骨を併用する方法で行っています。

良い点
傷んだ関節の骨がこすれあることがなくなるため、痛みが軽くなります。また、関節固定術とは違い、手術後も動きが残る、もしくは動きがよくなります。
欠点
”人工関節に対する相性” といったものがあるようで、人工関節に対する違和感を感じる方と感じない方との個人差が大きいのが難点です。術前にそれが分かるといいのですが、今のところよく分かっていません。相性のいい方はあっという間にほとんど痛みがなくなりますが、相性のあまりよくない方は、痛みが10段階中2‐3程度残るようです。
また、長年のうちに、骨に設置した人工関節がゆるんだりずれたりすると、再手術をすることがあります(各病院で使用している機種に依存します)。筆者のところだと、上側のインプラントが削りあがるケースがみられています。
感染すると治療に難渋します。感染が制御できない場合は、人工関節を抜去せざるを得ない場合も起こりえますが、一度人工関節を設置すると本来の骨を大きく損失しているため、次の手が打ちにくくなります。
関節固定術
関節全体が傷んでいるときに、関節をつくる向かい合った骨同士をくっつけて動かないようにすることで、痛みを減らす手術です。

良い点
痛い関節が動かなくなるので、痛みが軽減します。また、人工関節のような ”相性” といったものはなく、安定した痛みの軽減が得られます。
欠点
関節が動かなくなることに伴う不自由さが残ります(しゃがみ込み、急な坂道など)が、大半は慣れで解決するようです。また、関節固定によって隣の関節への負荷が増えるため、長期的には隣りの関節の変形が進行します。
関節固定か人工関節か
関節固定術か人工関節かは、それぞれ一長一短があるため、関節症の状態や患者さんの希望なども考慮しながら決定します。
| 関節固定 | 人工関節 | |
| 動き | 消失 | 保持 |
| 痛みの軽減 | 安定 | 個人差あり |
| 術後の安静 | 2か月非荷重 | 術直後から歩行可能 |
| 耐久性 | 一生もの | 再置換術の可能性あり |
| 術後のトラブル | 骨癒合不全 | 感染 |
| 術式変換 | 関節固定後人工関節への変換は可能 | 人工関節後関節固定への変換は不可能 |
関節固定か人工関節か迷っている方へ
関節固定か人工関節か迷っている方の中に、色々なインターネットの記事を見たり、色々な病院を受診したりして、情報が錯綜して混乱している方がいらっしゃいます。
まず、その医師がどちらの術式のほうがよいと思っているかは、その医師の人工足関節の経験値に大きく依存します。そのため、ある病院ではこう言われたが、別の病院ではまったく反対のことを言われた、ということがしばしば起こります(経験値の高い低いはもちろん、使用してきた人工関節の機種による違いなども影響します)。
また、インターネット上の情報を頼りに判断する、という意思決定の仕方にも問題があることに留意しておく必要があります。医師はどちらの術式においても良いことも悪いことも経験していますが、インターネット上にその経験すべてを開示しているわけではありません。したがって、患者さんがインターネットで情報を検索する際は、限られた情報(しかも良い方に偏った情報)にしかアクセスできないことに注意した上で、判断材料に活用する必要があります。

