アキレス腱付着部症の手術療法

アキレス腱付着部症

アウトライン

アキレス腱付着部症に対する手術療法を説明します。一般的には、別のところから取ってきた腱をアキレス腱付着部に移植する「アキレス腱再建術」が行われています。この治療成績は良いものの、侵襲の大きさに伴う合併症が少なからず見られます。そこで筆者は、内視鏡手術を考案し手術を行っていますので、これを紹介します(発表した論文はこちら)。

アキレス腱付着部再建術

方法

アキレス腱に沿った15㎝ほどの皮切をおき、アキレス腱を付着部からいったん切り離します。骨棘を削った上で、別のところから取ってきた腱でアキレス腱を補強しながら踵骨に再接着します。

アキレス腱再建術(モザイク加工)創トラブルや復帰の遅さが問題になることがあります。

問題点

アキレス腱付着部再建術は、最終的な治療成績は良いものの、手術の侵襲が大きいため、

  • 元の生活に戻るまで9か月かかった(Maffulli,2007)
  • スポーツ復帰まで13.5か月かかった(Miyamoto,2012)
  • 創過敏:14/39人(Yodlowski,2002)
  • ​創離開 :6/39人(Hunt,2015)

など、​手術創の問題や、復帰の遅さが指摘されています。

内視鏡下骨棘切除術

方法

アキレス腱再建術の侵襲の大きさに伴う合併症を踏まえ、筆者は、内視鏡下に骨棘のみを削る手術法を考案しました。

これは、骨棘の前後に5mmの皮切をおき、骨棘周囲を剥離したのち、透視下に骨棘を削り、できたスペースに内視鏡を挿入して郭清する、という方法です。

※手術の詳細は、「アキレス腱付着部症の内視鏡手術」の記事で、詳しく説明しています。

アキレス腱付着部症の内視鏡手術の手術創

後療法

術後3週間、シーネを付けたまま全荷重歩行を許可します。シーネでの歩行に慣れたら退院可能です(多くの方は術後3-7日程度で退院します)。

術後3週から2か月の間は、歩く程度の負荷にとどめます。

術後2か月から、軽いジョギングを開始します。

術後3か月から、本格的なスポーツに復帰します。

治療成績

術後成績は良好で、最初に行った26人26足(男18女8)​、平均年齢57.0歳(37‐74歳)​、平均経過観察期間12.5か月(5‐27か月)​では、術前のVisual Analog Scale (VAS)(我慢できない最大の痛みを100点としたときの、現在の痛みの自己評価)が、術前 52.9 点(20‐100)​から術後 12.9 点(0‐55)へと改善しています。26人中16人はVAS 10 点以下で、うち10人はVAS 0 点でした。

合併症

成績不良例は26人中3人でした(VAS 50-60程度の痛みが残存)。​3人とも1年後に再手術をしており、アキレス腱周囲の癒着を剥離したところ、症状が改善しました。

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