概要
ジャーナルから依頼された論文の査読についての日記です(著者やジャーナルに不利益が生じないよう内容の詳細は伏せています)。
経過
2023-7-10:International Journal of Environmental Research and Public Health (IJERPH)というジャーナルから依頼された査読。このジャーナルは、Sciamago Journal & Country Rank (SJR)のPublic HealthのジャンルでQ2にランクされているので、それなりのジャーナルのよう。お題はアキレス腱(非付着部)症のレビュー。期限が1週間しかなく、7月12日とせまっている。イタリアの大学からの論文で、二人で原稿を準備したのち、複数人で編集・査読、さらに複数の監督者がチェックののち、全員が投稿原稿に同意したという気の入れよう。大学から複数人の共著者で論文を出すのなら、このくらいしてほしいものだ。おかげでこちらから指摘することはほとんどない。
2023-7-11:それにしてもずいぶんしっかりとしたレビューだと思ったので、共著者を調べたら、Maffulli先生と関係のあるグループらしい。責任者はMaffulli先生のところで論文を10本書いているし、筆頭著者もこれが6本目の論文のよう。アキレス腱症(アキレス腱付着部症・非付着部症)のうち、アキレス腱非付着部症にだけ限定したレビューであることがあいまいだったので、そこだけ指摘して提出。こういう査読は楽だ。
などと思っていたら、IJERPHの副編集長からメール。レビューを送ってくれてありがとうと言いつつも、以下の質問に答えて下さいと、レビューの追加を要求された。あまりにあっさりしすぎたか。とりあえず回答して返送。ついでにレビューアーのサイトを見ると、もうひとりの査読者のコメントを見ることができた。すると、かなり手厳しい評価(各評価項目5段階で2や3ばかり)。しかしよくよく査読コメント見ると、確かにそう直してもよいが、別に今のままでも大差はない、というものばかり。査読者は自分でレビューを書いたことがあるのだろうか。これだけの文献を参照しながらレビューを書くというのは大変なんですよ。それなら、自分が文献を読む手間を省かせてくれて、これだけの文献をまぁまとまりよく提示してくれるレビューをありがたいと思わないのだろうか。こういう、人にばかり厳しいタイプには、「じゃあお前の論文見せろよ」と言いたくなる。
2023-7-12:続いて、Foot & Ankle Specialistから依頼されている靴に関するレビュー論文の査読。締め切りが7月19日。
2023-7-13:FASの論文の査読。査読は締め切り間際にやるよりも、毎日少しずつ読み進めてはコメントを書いていく方がよいと思ってきた。結局最初に思いついたことが有効な意見なことが多い。
2023-7-15:FASの論文の査読。興味のないレビュー論文は苦痛だということがよくわかった。
2023-7-19:FASの論文の査読。2度目に読んだら1度目ほど苦痛ではなかった。レビューゆえ記述のほとんどは文献の引用なので、ほとんど直すところがない。厚底ランニングシューズについてのレビュー論文なのに「人類の歩行は…」といった大上段に構えた書き出しをしていたので、そういう冗長な記述は不要だと指摘。あとはマイナーリビジョンをいくつか指摘して終了。提出。
2023-7-23:2023-6-11に提出したFASの査読に対し、論文が修正されたので再度査読してくださいとの依頼が先週来ていたので、その査読。だいぶましになっている。ここでまぁいいやとしてしまうか、しつこく修正点を指摘するか、迷うところ。
2023-7-26:やはりしつこく指摘することに。もう一度最初から読み直して、気になるところを指摘。期限は現地時間の8月1日まで。足の外科では有名なTH Rui先生のグループからの論文だからか、初回はずいぶん甘く査読してしまったようで、よくよく見れば書き方はかなりお粗末だ。とくに気になるのは、方法と結果が一致していない点。何をやって、その結果がどうだったのかは、ちゃんと対応させて書かなければならない。
2023-7-27:昨日の続きのFASの論文の査読。どうしてこう図の説明が雑なのだろう。説明が雑で非をとがめられるのは著者自身なのに。
2023-7-28:昨日の査読の続き。ほぼ完成。
2023-7-30:査読コメントを見直した上で提出。書き方は稚拙な個所も多いが、論文のネタとしては十分にアクセプトされてよいものなので、こちらはひたすらに添削者にならざるを得ない。
2023-8-17:FASから、7/30に提出した査読に対する修正が著者から提出されたのでまた査読してください、とメールが来た。途中で投げ出すわけにもいかないので承諾。早速見ると、アブストラクトは言われるがままに直しているが、その結果、制限語数の250語をオーバーしている(269語)。どうしてこういうことになってしまうのだろうのか。どんな訂正をするのであれ、投稿規定を守るのは当たり前だろう。「Abstractを訂正する際は、制限語数をはみ出さないように注意して下さい」と言わなければならないのか(バカなのか)。他には、図に関して、前のときに図のタイトルと図の説明を一緒にしたような記述になっているから、「図のタイトルと図の説明をわけて書いてください」と書いたら、図のタイトルは「図1」だけになっていて、残りの記述をすべて「図の説明」としていた。図のタイトルが「図1」って。。これに関しても、他の論文を見て、図のタイトルとか説明をどのようにすればいいのか参考にしよう、とか思わないのか。というかそもそも上級医師にちゃんと見てもらってから提出したのか(TH Lui先生にちゃんと見てもらったのか)。こういうふざけた訂正の仕方を見ると、1回Rejectを食らって出直した方がいいのではないかと思ってしまう。こういう論文にどこまで付き合うか。
2023-9-4:あまりに書き方が稚拙すぎるため、査読に嫌気がさして放っておいた論文の査読の締め切りが今日。もうやらざるを得ない。投稿規定の図の説明の部分を見ると、ほとんど指示がないので、この稚拙な図の説明も投稿規定違反とは言えない。まぁ意味が通らなくもないので、そのまま放置。図の中の記号も小さすぎるが、これも投稿規定には記載がないし、何ならアクセプト後に出版社から指摘があるだろう。こんなところに構っていられない。アブストラクトは投稿規定によれば200語だった!なんと69語もオーバー。これは看過できないので修正するよう指摘。ディスカッションの書き方も言ったらきりがない。イントロダクションで、科学の広い海の中から未解決の特定のテーマを絞り込み、それに対して研究、出てきた結果を一般化可能性の観点から議論し、科学に還元する、という作業をやっている以上、必然的にイントロダクションとディスカッションは逆構造になるべきだが、このディスカッションは、多くのダメなディスカッションと同様、いきなり過去の文献について述べはじめ、「それらの文献と自分たちの論文結果は一致していました」という、他に迎合するような論調となっている。他と食い違わなくてほっとするようなお友達感覚の人は論文なんて書くなよ、などと思いつつも、今までの論文修正の稚拙さからして、いくら言っても大して変わらないだろうから、また、その論文で一番大切なのは結果なので、ここらへんは目をつぶることに。ということで、アブストラクトの大幅な修正以外は、図の説明を少々と、本文の表現を数か所指摘して提出。こんな論文に付き合わされるのもたまったものではないが、その間、SAGEのジャーナル(特にFoot & Ankle International)がアクセスし放題なので、よかったと思おう。
2023-10-2:以前2023-6-21締め切りで査読したJournal of Health Sciencesというジャーナルの論文の手直しが出来上がったので、また査読してくださいのメール。10月3日までに査読をするかどうかの返事をしたのちに、10月10日までに査読を提出してくださいと。今これだけ忙しいのに、それはムリ。「今はとても忙しいのでお断りします。締め切りが11月5日までなら喜んで査読します」の返事。
2023-10-4:9月4日に返却したFoot and Ankle Specialist (FAS)の査読に対する修正が再度来たので再査読。ひとつの図だけラベルのつけ間違え。前回の査読でも左右のミスを指摘したのに、どうして一発で直せないのだろうと思いつつ、この点を指摘しながら、Accept after minor revision and without re-reviewとして提出。
2023-10-19:Journal of Clinical Medicineというジャーナルから査読依頼が来た。調べるとPubMedにもJCRジャーナルリストにも載っているちゃんとしたジャーナルのよう。足関節骨折手術の脛腓間スクリューを抜釘した群としない群とのさまざまな指標の比較。学会準備がほとんど終わったし、ちゃんとしたジャーナルのようなので引き受けることに。期限は10月29日まで。
2023-10-29:一昨日足の外科学会は終わり、発表で疲れたので旅程を繰り上げて一昨日のうちに帰宅。足の外科認定医とやらを去年から日本足の外科学会が設定していて、こういうのは取っておかないとあらぬ疑いをかけられるので、面倒だが取っておくことに。昨日すべて書類をそろえて提出しようとしたが、思いの他面倒で、とても昨日一日では終わらず、今朝も朝早く病院に行き、書類をそろえることに。足の外科の症例100例を表にまとめたものと、詳しく10症例についてのレポートを出さなければならない。100症例の方は3時間くらいで出来上がったものの、10症例の方は、1症例につき何だかんだ1時間かかった。夕方になってやっとすべて終わって郵便局で提出。昨日今日でへとへとだが、これから査読をやらなければならない。
まずざっと見るととても長い!それから書いてあることがうだうだと長たらしく、訳わからない。整形外科のジャーナルでこんなに分かりにくかったらすぐにRejectされるはずだが、Journal of Clinical Medicineはこんな調子なのか。もっともらしいことを仰々しく書いているはずが、実は大したことは書いていない、というか書き方があまりに整形外科医っぽくない(整形外科医はもっと単純にできている)ので、著者を調べたところ、学生さんが整形外科に実習に回っているときに書いた論文のようだ(むこうの学生は学生のうちからこうやって論文を書く)。どうりで長いわりに中身がないはずだ。「方法は詳しく、結果は簡潔に」とか「方法と結果とは対応させてわかりやすく」とか指導しないのか。忙しいなら、スタディデザインごとのこういう情報を書く、というようなマニュアルを渡すとか。学生さんはただ一生懸命書いただけなのだが、いかんせん学生レポートっぽいのである。医者は忙しい合間を縫って論文を読むのだから、読んでぱっとわからない論文とか時間の無駄なので読ませないでほしい、っつーか大学ならちゃんと指導しろよ、指導できないなら大学にいるなよ、などとあらゆる文句を言いたくなる。今日は疲れたのでこれ以上取り組むのはちょっと無理。欧米とは時差があるので、明日の朝に書こう。
2023-10-30:朝2時に目が覚めたので早速査読。細かく直すというより、おおざっぱにどこがダメなのかを今後にも生かせる形で伝えた方が良いと思ってコメント。まずは方法のお粗末さがひどいので、こういう順番で書けとか、読者が読んで研究を再現できるように書けとか、いくつかのジャーナルの投稿規定を読んで書き方のフォーマットを身につけろなどをアドバイス。あとはよくある仮説を立ててそれを検証するために研究をデザインしていない点を指摘したり、表を見ればわかる結果をだらだら記述するのはやめろ、とか、まぁそんなアドバイスをして終わった。リジェクトでもよいが、学生なのにやる気をもって論文を書こうとしている若者の芽をつぶすようなことは避けたいので、Major Revisionにして提出した。間に合った。
ついでにメールを見ていたら、エジプトの医学生からメールが来ていた。こちらの出す論文を継続的に読んでいたとのことで、来年4月から研究員として留学したいとのこと。本当?見ると大学のメールアドレスから送っており、その大学を調べたら、西暦700年くらいからある由緒正しいところのよう。どのように返事したらよいものか。
2023-11-16:Journal of Clinical Medicineからメール。修正原稿が来たので再査読して下さいと。見ると、前半の見た範囲ではとてもよく直っている。このようにぱっと修正できるのは好印象だ。
2023-11-22:Journal of Clinical Medicineから査読した論文が無事アクセプトされましたと。
2023-12-28:Foot and Ankle Specialist(FAS)から査読依頼。ちょうど自分の論文を英語添削に出してほっとしたタイミングなのが絶妙。息抜きにはちょうどいいので快諾。
2023-12-31:自分の論文の提出が終わったので、査読開始。関節面が転位した踵骨骨折に対して最初に距骨下関節固定術を行った研究のシステマティックレビュー。まずはシステマティックレビューのガイドラインであるPRISMA読み。
2024-1-4:FASからメール。「最近レビューをお願いしましたが、その必要がないことが判明しました。またの機会にお願いします」と。システマティックレビューだから、方法に特に問題なければアクセプトでいいと編集長が判断したか、査読者の数が充足していたか。正月早々めでたい。
2024-1-6:Exploration of Musculoskeletal Diseasesというジャーナルからレビュー依頼。聞いたことない雑誌だが、スペインの某大学の教授が編集長をやっていて、open accessなのにarticle processing chargeが2028年まで無料なこと(たぶんちゃんとした雑誌に育てるためにそうしているのだろう)や、返事をもらってからアクセスのアカウントを作るなど、割と丁寧なメールの内容だったことから、引き受けることに。著者はスペインの某大学の准教授。PubMedで調べると、スペイン語論文22本、英語論文7本書いている。スペイン語で論文を書こうというのがえらい。こちらなど、日本語で論文を書いてもどうせ誰も読まないから、そんな努力をするのはまっぴらごめんと思っているが、せっせと書いている。大学向きの人だ。
2024-1-9:Exploration of Musculoskeletal Diseasesから返事。すでに査読者が充足しているのでまたの機会に宜しくお願いします、ありがとうございましたと。まぁ善意だけ売って何もやらなくて済むのはいいことだ。
2024-1-15:Medicinaというジャーナルから査読依頼。見るとアキレス腱症の保存治療のケースレポート。Medicinaというジャーナルは、PubMedにもWeb of Scienceにも登録されている総合誌らしい。ケースレポートの大半はひどいものなので気が進まないが、ちゃんとしている雑誌のようなので引き受けることに。
2024-1-22:1月25日締め切りなのでそろそろやらないと。PubMedで調べたら、某有名足の外科先生のところで初期研修を終えた医師で、すでに5本筆頭著者の論文を出しているよう。見ると概ねよく書けているが、ケースレポートなのにディスカッションで大風呂敷を広げてしまっているところなどはよくある粗相。
2024-1-23:査読作業。この論文は日本語論文でよくある「case report and review of the literature」というやつ。この形式の論文はダメ論文の最たるものだと思うが、どうしてこういう論文を書こうと思うのだろう。論文というものは今まで分からなかったことを何かしら解明したからこそ書くものなのに、大して目新しくもないケースをレポートし、それにまつわる文献をただ集めただけで、どうして論文になると思えるのだろう。ケースがダメな分をレビューを加えれば箔が付くとでも思うのだろうか。そんなことならレビュー論文を書けばよい。この論文のディスカッションでも、自分の症例についての言及は一切なく、ただひたすらに文献をまとめるのみ。自分の症例を通じて新たに分かったことはないのか。結局自分では何も考えていないのである。
2024-1-24:査読作業。「case report and review of the literature」という形式の論文の価値には疑問があるが、自分の経験した症例の科学的根拠をしっかり調べることは、著者自身の勉強としてはいいだろう。そういう意味でこういう論文をしっかり書けている著者はそれなりに優秀なのだと思う。背景での問題提起に対して結論が合っていない点や、アブストラクトが叙述的で本文の具体的な内容を十分に反映していない点などを除いては、おおむねよく書けている。しかしこういう「case report and review of the literature」がScimago Journal & Country RankのQ2ランクのジャーナルに載る価値があるかというと別問題。なるべく今後の論文執筆に生かせるようなことを書くことを心掛けながらコメントを完成。recommendは申し訳ないがreject。論文は研究の質が命なのだなとつくづく思う。もう一人査読者がすでに提出していたのでそれを見ると、やはりrejectで、しかも著者へのコメントはかなり強い調子で否定的に書いている。rejectと言われて落ち込むのだから、そんなに強く言わなくてもいいのに。
2024-2-3:Foot and Ankle Specialistから査読依頼のメール。母趾MTP関節の関節固定術の癒合不全に関する研究。まぁ面白そうなので承諾。
査読ではちゃんと読まないと著者に失礼なので、日本語にしてしっかりと理解するようにしている。PDFをGoogle翻訳を使ってそのまま日本語に翻訳すると、行番号などにじゃまをされてきれいな訳にならないので、PDFをWordに変換の後、行番号や文献番号などを削除して体裁を整えた上でGoogle翻訳し、きれいな和訳になるようにしている。査読の初日はこの作業。これさえやっておけば、査読も大した負担ではない。
2024-2-14:論文を読みながら査読のコメント記載。
Clinical Medicine Insights: Arthritis and Musculoskeletal Disordersというジャーナルから査読依頼。強剛母趾の注射についてのケースレポート。ケースレポートはほとんどがゴミなのは知っているが、強剛母趾の査読を依頼されたのは自分の強剛母趾の論文が認められたからでもあるので、引き受けることに。このジャーナルはSAGEジャーナルで、査読を引き受けると60日間SAGEジャーナルが無料で閲覧できるとのこと。Foot & Ankle Internationalで読みたい論文がダウンロードできるのでラッキー。
2024-2-21:FASの査読の締め切りが明後日なのでやることに。母趾MTP関節の関節固定術の癒合不全を、多変量ロジスティック回帰分析を用いて検証した研究。モデルの適合度に関する記述に若干の不備はあったが、それ以外はおおむね問題がなかった。
2024-2-22:FASの査読。英語のコメントを書いて提出。問題の少ない論文だと査読も楽。
2024-2-26:Clinical Medicine Insights: Arthritis and Musculoskeletal Disordersからの査読。読んだら、去年の1月にJournal of Visualized Experimentsというジャーナルからの依頼で査読したスペインの某大学からの論文と同じだった。前回は実験プロトコールという形だったが、プロトコールとしては不備があるのでダメ出ししたところRejectとなったようで、ほぼ同じ内容が今度はケースレポートの形に変わって、別のジャーナルに投稿されたようだ。筆者のスペイン人は前回の実験プロトコール論文に付属していた手技ビデオで見たところ、30-35歳くらいの真面目そうな女性医師だが、一つの論文が中々アクセプトにならず、ずいぶんと苦労しているよう。大学院生で引くに引けないと言ったところか。実験プロトコールとしては不備があるが、ケースレポートならそこまで目くじらを立てる所ではないので、大きな不備がなければ甘めに見てあげよう。
2024-3-8:ジャーナルから査読の提出期限は3月14日だというリマインダーのメール。そろそろやらなければ。イントロの査読。どうして一般的なことをぐだぐだ書いた挙句、いきなり本研究の目的を書くのだろう。論に何のつながりもない。ある疾患の一般的な知見から特定の問題に焦点を絞り、それがまだ未解決の問題であることを書き、その問題を解決するためにどういう仮説を立て、その仮説を検証するためにどう研究をデザインしたのかを書くのはどの論文でも共通のお作法なのに。こんなの論文の書き方本にはいくらでも書いてあることだが、そういうのを読もうと思わないのだろうか。何ならAIに聞けば10秒でおおまかには教えてくれる。腹立たしいのが、これが足の外科で有名な某大学からの論文であることだ。大学ならば指導医がちゃんと添削してからジャーナルに投稿すべきだ。
2024-3-9:査読。文章の論理的な構成力が根本的に欠けているので、確かに必要なことは書いてあるのだが、それがいちいち適切なところではない。こういう組み立ての悪さは、必要なことは書いてあるだけに、悪いということをとても指摘しにくい。こういう人は病院の中でもよく見かけるのですよ。何が間違っているわけではないけれど、何となく仕事が遅れ遅れになってしまう人とか、仕事が求められるものと何かずれてしまう人とか。
2024-3-12:査読。”a case report and review of the literature”という形式で書かれた論文はつくづくダメだと思う。レアケースを報告して、文献をちょっと調べて補強すれば論文になるのだという経験は、今後の論文生活にとってマイナスでしかない。研究というのは、まだ分かっていないことがあって、それを解明するためにするものであるから、まだ分かっていないことをはっきりさせるための文献検索が先にあるものなのに、”a case report and review of the literature”では、行き当たりばったりのレアケースがまずあって、後付けで文献を調べてみました、という論文形式となっており、本来の研究とは逆の思考プロセスになってしまっているのである。初めて論文を書きたいのなら、適切な指導医のもと、システマティックレビューを書くのがもっともよいと思う。どこまで分かっていてどこから先が分かっていないかを調べるという研究の思考プロセスに乗っ取っているし、網羅的な文献検索の方法を学べるし、様々な文献を読むことで、いい研究とそうでない研究はどう違うのかを学べるからだ。今査読しているこの”a case report and review of the literature”も、言いたいことは山ほどあるが、たぶんこの著者の書きっぷりからして今後も研究フィールドに残る人ではないだろうから、記念に1本論文が出ておしまいでいいのではないかと思えてきた。
ということで、基本的にはアクセプト方向に持って行ってあげようとは思いつつも、やはりこんなごたごたに記述している論文は許しかねる。そこで、論文としての最低限の枠組みは満たすため、先行研究から本研究の目的にスムーズにつながるよう、この記述はここに移せ、この記述は冗長で意味がないから削除を検討せよ、目的と結論はきちんと対応するようにせよ、などを書いてほぼ終了。前回、Journal of Visualized Experimentsでこの著者の査読をやった際、この著者はその査読コメントをことごとく無視してきたが、今回はただ並べ替えるだけだから従うだろうか。
2024-3-13:BMC Musculoskeletal Disordersから査読依頼。外反母趾の従来の術式と最小侵襲術式の比較論文。BMC Musculoskeletal Disordersは自分も出そうかと検討しているジャーナルだし、査読をやると自分の論文の出版料を15%割引してくれるとのことなので、承諾することに。提出期限が3月22日まで。数えてみれば、これがちょうど20本目の査読。
Clinical Medicine Insights: Arthritis and Musculoskeletal Disordersのケースレポートの方は、昨日査読したものを見直して提出。するとSAGEからお礼のメールが来て、SAGEジャーナルの閲覧を60日無料にしますと。この間に最新のFoot & Ankle Internationalの文献で使えそうなものをダウンロードしておこう。
2024-3-21:査読締め切りが明後日朝(現地時間3月22日)。そろそろやらなければ。基本的によく書けている論文なので、大して直す箇所も見当たらない。
2024-3-22:査読。アブストラクトが大幅に字数オーバーな点や、結果の一部を方法に記載している点以外にはさほど大きな修正点はなかった。
2024-3-23:査読の最後の部分を仕上げてBMC Musculoskeletal Disordersに提出。
2024-3-27:Journal of Clinical Medicineからメール。査読してくれた論文がアクセプトされましたと。どうもこのところ査読の依頼のあるジャーナルを見ると、オープンアクセスかつWeb of ScienceにもPubMedにも掲載されているジャーナルで、必ずしも整形外科雑誌ではない、というジャーナルが多い。上記のJournal of Clinical MedicineとかClinical Medicine InsightsとかBMJ Openとか。散々苦労して足の外科雑誌に出したものの、母体の弱さなのか、まだWeb of Scienceにも掲載されていないなどとなると、がっかりする。どうせどのジャーナルに載ったとしても、検索されるのはPubMedなのだから、変に狭き門を目指して苦労するよりは、上記のような十分な評価がある割に比較的アクセプトされやすく、しかもオープンアクセスのジャーナルを目指した方がよいのかもしれない。
などと思っていたら、今度はScientific Reportsというジャーナルから査読依頼。このジャーナルはあのNatureの母体が出しているオープンアクセスのジャーナルで、やはりWeb of ScienceにもPubMedにも掲載されている。ホームページを見てみたら、方法論が適切であれば結果は問わない、というコンセプトらしい。依頼された論文は7本の論文を集めたシステマティックレビュー。一般に論文数の少ないシステマティックレビューは結果に注意せよということが言われているが、「方法論が適切であれば結果は問わない」というジャーナルのコンセプトに合致しているということか。なるほど。今後の論文提出先の候補にもなりうるので、査読を引き受けることに。
2024-3-31:Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery (AOTS)から査読依頼。AOTSはScimago Journal & Country Rankingでも最上位のQ1に属するジャーナル。関節鏡下母趾種子骨切除術についての論文。この内容に関しては自分以上に査読に適した人は世界にいないと思っているので引き受けることに。確かに自分の論文も引用されている。ただざっと見たところ、このくらいの内容でQ1のジャーナルに掲載されてよいのか?
2024-4-3:Clinical Medicine Insightsで査読した、例のスペインの某大学の女医さんの論文の手直しが終わったのでまた査読してくださいとメール。締め切りが5月3日と余裕がある。
4月5日締め切りのScientific Reportsの査読を開始。見るとやたらとよく書かれている。著者の所属を見たらまだ医学生のよう。よほど教育がしっかりしているのだろう。
2024-4-4:Scientific Reportsの査読。メタ解析部も評価しなければならないので大変。
2024-4-5:Scientific Reportsの査読。メタ解析の細かいところは分からないが、選ばれている論文やその結果に問題はないようなので、主に論文の書き方や表現のおかしいところを指摘するのに終始。
2024-4-6:Scientific Reportsの査読。目的と結論がずれてしまうことや本文の結論とアブストラクトの結論がずれてしまうことはよく見かけること。それらを指摘して提出。
2024-4-9:外反母趾の論文を英語添削に出しているので、その間に関節鏡下母趾種子骨切除術の査読。イントロを読みだした瞬間に書き慣れていない著者だということがバレてしまう。一般的なことをダラダラ書き、なかなかその論文のテーマへと焦点を絞っていけない。まぁそれは100歩ゆずってよいとしても、何しろ関節鏡の記載がお粗末すぎる。おそらくちゃんと関節鏡で種子骨を見ることができずに、透視下に適当に削って良しとしているのだろう。実際にやっている身としては、関節鏡のどこが難しいか熟知しているので、そこをごまかそうとしている記述はすぐに分かる。そのあとに術後成績だのディスカッションだの、いくら立派なことを書いてもだめだ。すべては信用のならない方法を前提としているのだから。もうその時点で科学に対して誠実でないのである。
2024-4-10:関節鏡下母趾種子骨切除術の査読。ディスカッション。前半は大して関連性の高くない文献を並べて字数かせぎをしているだけ。最後になって小生の書いた関節鏡下母趾種子骨切除術の論文を取り上げ、それと比較して自分たちの結果も似ていてよかったです、でおしまい。こんな迫力のない論文になってしまう理由は、自分自身の目に自信がないからである。この論文では強剛母趾の症例が5例含まれているが、強剛母趾の母趾種子骨切除など、慣れていない人ではうまく行きっこない(うまく行っていないから術中写真の1枚すら載せていない)。ならなぜ、うまく行かないなら自分たちはうまく行かなかったと書けないのか。人と同じでほっとするような人は論文に向いていないと思う。
2024-4-12:関節鏡下母趾種子骨切除術の査読。査読コメントの整理。人の論文をトレースしたような論文は価値が低いので、いっそ強剛母趾に対する関節鏡下母趾種子骨切除術に書き換えることを提案。こちらのほうがよほど歴史的価値がある。
2024-4-13:強剛母趾に対する関節鏡下母趾種子骨切除術に書き換えることを思いついたが、これは種子骨を内外両方切除しないと成立しないことに後から気づいた。なのでこの案はダメで、この論文はそのままにダメ出ししなければならなくなった。母趾種子骨切除の手技についてまったく記載せずにごまかそうとしている点について、「この場合はどのように鏡視できたのか」「この場合は関節鏡の角度的に見えないはずだがどう処理したか」など、いやらしい質問をたくさんしておいた。こちらの性格が悪いのはさておき、できもしない手技をごまかしながら記載する筆者も悪い。ていうかどうしてできないならできないと書けないのだろう。できないということは手術手技自体の問題かもしれず、それを指摘することでその手技がさらに改良されるかもしれないのに。科学にとって嘘が一番ダメだ。
2024‐4‐14:関節鏡下母趾種子骨切除術の査読が完了したので提出。ただ査読コメントを出せばいいのではなく、題名、アブストラクト、背景などそれぞれの項目ごとにどういう出来か、ジャーナルの用意した質問に答えなければならない。一つ一つ答えると、この論文はだいぶダメな論文であることがはっきりしてしまった。
自分の論文は一区切りがついているし、今日は時間があるので、Clinical Medicine Insightsの例のスペインの某大学の女医さんの論文の再査読。前回具体的にこの記述を消せとかどこに移せとか言ったので、どうやらその通りにしたらしく、ずいぶんと読みやすくなっていた。イントロダクションで一般的な知識から特定の問題へとぐっと焦点が当たる感じが出ているし、ディスカッションではこの論文の結果から出発して他の研究と比較しながら一般化可能かどうか議論が広がっていく感じがよく出ている。ケースレポートでこれなら十分だろう。看過できない点のみ指摘して、あとはアクセプトを推薦して良さそうだ。
2024-4-15:Clinical Medicine Insightsの強剛母趾ケースレポートの査読コメント書き。
2024-4-16:査読し終わったのでClinical Medicine Insightsに提出。
2024-4-29:Archives of Orthopaedic and Trauma Surgeryからメール。関節鏡下母趾種子骨切除術の論文はRejectされましたと。肝心な手術手技の記載をごまかして、さもできたように書くような論文はRejectされてしかるべきだが、難しいなら難しい、できないならできない、と正直に言えないことの科学的な罪深さを、著者たちはこちらの査読コメントから汲み取ってくれるだろうか。別のジャーナルに投稿してもまた自分のところに査読依頼が来る可能性が高いので、そのときが楽しみだ。
2024-5-16:Clinical Medicine Insightsから強剛母趾ケースレポートの修正が終わったので再査読をとのメール。提出は6月13日まで。
2024-5-23:Journal of Clinical Medicine (JCM)から査読依頼のメール。踵骨骨折の普通のプレート固定と最小侵襲手術の治療成績の比較の論文。今はあまり忙しくないので引き受けることに。締め切りが5月29日。
2024-5-27:JCMの査読。原稿を英語のまま査読しようとしたが、長すぎて全体を把握しきれないので、仕方なく翻訳することに。PDFファイルの本文を少しずつコピーしながらWordファイルを作り、Google翻訳を使って翻訳(PDFファイルのままだと行番号にじゃまされてちゃんと翻訳されない)。これでだいぶやりやすくなった。日本語換算で10900語。やはり長い。
2024-5-28:JCMの査読。この著者は1つの事項を2つの段落に離して書く癖がある。わずらわしい。方法と結果が対応していない、結果の提示の仕方も叙述的、結果セクションに書かれていない結果がディスカッションで初出する、など、至る所でごたごた。どうして簡潔に整理して提示できないのだろう。あまりにごたごたなので、著者はどんな人なのだろうと調べてみたら、何とイタリアの某大学の准教授。筆頭著者の英語論文も44本もある。どうしてこんなことになるのか改めて論文を見直すと、おそらく内容の薄いことをもっともらしく書き連ねてボリュームを稼ぐのがうまいのである。はじめはこちらも量に圧倒されたが、日本語に翻訳してよくよく読んでみたら支離滅裂で、とても論文としての体裁をなしていない。しかも、Publishされているジャーナルを見ると、量産型のOpen Accessジャーナルが多い。PubMedに掲載されるも査読者が手薄かつ査読のゆるい新興Open Accessジャーナルにボリュームで圧倒するような論文を大量に投稿しているという訳か。世の中には論文を大して書かずに教授になる人も少なからずいて、そんな人よりはよほどましだが、質の低い論文を大量生産するというのはどうなのだろう。大学に身を置く立場としては背に腹は代えられぬか。
2024-5-29:JCMの査読。致命的な欠陥を発見。この論文は踵骨骨折に対する観血的整復内固定術と最小侵襲手術の治療成績をretrospectiveに比較しているが、これら2つの術式の選択が、ただ何となく術者の好みで各症例ごとに決められているのである。こんなことが許されるのなら、難しそうな症例はすべて観血的整復内固定術、簡単そうな症例はすべて最小侵襲手術、などといった偏向な術式選択も可能となってしまい、こんな分けられ方で分けられた2グループの治療成績をいくら比較しても、どちらがいいとか言えたものではない。ということでRejectを勧めて提出。方法の出発点が間違った論文は、間違った結果や結論を導き出すだけだから、即座にRejectの対象となってしまう。ただ、原稿全体改善すべき点は今後のためにと細かくコメントした。
2023-5-31:Foot and Ankle Specialist (FAS)から査読依頼のメール。FASとはこれからもいい関係を続けていきたいので承諾。
2024-6-2:FASから査読依頼された論文をWordファイル化したのち、Google翻訳して通読。ピックルボールという高齢者用の簡易テニスに関する疫学調査。こういう論文は方法が正しいかどうかだけだからつまらない。あまり訂正するところもない。
2024-6-12:Clinical Medicine Insights: Arthritis and Musculoskeletal Disordersから依頼が来ている例のスペイン某足の外科で有名な大学の女医さんが書いたケースレポートの査読。特に問題なく書けている(というか前回ここはああしろとか相当具体的な手直しを指示した)。Scimago Journal Ranking Q3のジャーナルにこのくらいのケースレポートが載るのは別に問題ないし、著者のスペインの女医さんも去年から相当痛めつけられているのも知っているので、もうOKでいいかと。Acceptを推薦して提出。
2024-6-16:FASから依頼されているピックルボールの論文の査読。こういうつまらない論文を書く人はえらいと思う。誰かが調べないと明らかにならないことだから。
2024-6-17:FASから依頼されているピックルボールの論文の査読の続き。
2024-6-18:査読の続き。この論文が採択されるかどうかは、ピックルボール関連のアキレス腱断裂を興味のあるトピックと考えるかどうかに尽きる。あまり熱心に査読してもお互いに有意義な時間にはならなさそう。さっさと出そう。
2024-6-19:5月29日にRejectのコメントを提出したJCMからメール。修正が終わったので再査読して下さいと。いつも自分が出しているジャーナルなら、ひとりの査読者がRejectと言ったらRejectになるのに、また査読して下さいということは、JCM自体がなるべく載せようとするジャーナルということか。しかも期日が21日までと。「コメントに対してちゃんと対応しているから簡単にチェックできると思います」と。自分の論文も提出したばかりだし、まぁいいか。見ると、さすがに40数本も論文を出している人だけあって、査読コメントに対する修正は徹底的。ほぼすべて書き直すくらいの勢いで書き直している。こちらがRejectの理由に挙げたことに関しては完全に白旗を上げて、Limitationとして記載している。日本人気質からか、白旗を上げた人には何となく寛容になってしまう。
2024-6-20:昨日の査読の続き。統計解析方法でひとつおかしな結論を出しているところを発見。ここは結論に直結するところなので厳しく追及。提出。続いてFASから依頼されているピックルボールのアキレス腱断裂についての論文の査読。こちらはアブストラクトをちょっと書き換える程度。あとは論文そのもののつまらなさを編集長がどう判断するか。こちらも提出。
2024-6-27:Medicinaから査読依頼。アキレス腱断裂のオープン手術と経皮的手術の比較論文。題名を聞いただけでつまらなそうだが、今は比較的余裕があるので承諾。
2024-6-28:アキレス腱断裂の論文の査読。単に治療成績をまとめただけで、特に目新しい知見があるわけではない。ディスカッションも他の研究の治療成績と同様であることを確認しただけ。こういう努力をする人ってよくわからない。新たな知見を世に知らしめてアッと言わせようといったワクワクもドキドキもなく、単に他の人と同じ結果でした、と述べるだけの論文を書いて楽しいのだろうか。
2024-6-29:Journal of Orthopaedic Surgery and Research(JOSR)から査読依頼。外反母趾の経皮的手術とオープン手術の治療成績の比較論文。JOSRはちゃんとしたジャーナルなので引き受けることに。7月8日締め切り。
2024-7-1:Medicinaの査読。結果の提示のごたごたさや、データの無意味な棒グラフ化などが気になる。「統計的に有意」という言葉を簡単に使っているが、どの統計的手法を用いて解析しているのか記述が曖昧。
2024-7-2:BMC Musculoskeletal Disordersから査読依頼。いつも論文を出しているジャーナルと同レベルのジャーナルなので快諾。踵骨骨折の手術法に関するもの。結果、今すべき査読が3つになってしまった。期日の一番近いMedicinaの査読を終了。あまり問題は少ないが、箱ひげ図で示すべきところを棒グラフで示していたり、円グラフで示せば一目でわかることをダラダラ記載していたりするところなどを指摘。ていうかそもそも、オープン手術と経皮的手術の治療成績の比較といったありふれた研究を今更出す必要があるのかという点もあるが、それは編集長に判断してもらおう。
Journal of Clinical Medicine(JCM)からメール。「今度”Clinical Perspectives on Foot and Ankle Surgery”というトピックで特集号を作ろうと企画していますが、ゲスト編集者になりませんか」と。JCMはPubMedやWeb of Scienceにも登録されているし、Scimago Journal Rankingでも総合誌のQ1にランクしているジャーナル。ゲスト編集者は、こちらのアイディアに従ってトピックを調整したり、特集号の目的や範囲を定義したり、寄稿の募集と事前チェック・最終決定などをするとのこと。さらに、ゲスト編集者自身の論文と、ゲスト編集者が招待した3本の論文は論文処理料が無料になるとのこと。とてもよい話だが、急な大役でめまいがする。今まで論文を書き、そこから査読者としての実績も積み重ねてきたので、次の段階としてはゲスト編集者ということになるだろうか。とりあえずやってみないと分からないし、論文もタダにしてくれるとのことだから、引き受けてみよう。
2024-7-3:JCMの編集部から返事があり、1週間以内にトピックをカバーする200語の短い要約と6-10個のキーワードを返送せよと。どういうテーマにするかしばらく考えよう。JOSRから依頼の外反母趾の経皮的手術とオープン手術の治療成績の比較論文の査読。自分の論文は仕事から家に帰ると疲れてやる気が起きないが、人の論文の査読は突っ込みどころを探すだけなのでできる。やはり、一から自分で作るのと作られたものを批評するのとでは、頭を使う量が違う。
2024-7-6:JOSRから依頼の外反母趾手術のオープン手術と経皮手術の比較論文の査読。問題なのは、フォローアップが6カ月しかないこと。その時点でこちらの術式のほうがよい、というのが、臨床的にどれだけ意味があるのだろう。しかもその差もわずかだ。多くのジャーナルが術後2年以上のフォローアップを必須としているのは、やはり短いフォローアップでは治療効果を評価できないと認識しているのだからではないのか。JOSRのようなそれなりに評価されるジャーナルがこんな論文をアクセプトしていいのか?
2024-7-7:JOSRの査読。おおむね良く書けた論文だが、フォローアップ期間が6か月と短すぎるので、いったんこの論文は撤退して、術後2年までデータを積み上げてから再提出すべきだと書いて提出。続いてBMC Musculoskeletal Disordersから来た踵骨骨折の治療成績に関する論文の査読。ちゃんとデータを取って実直にまとめている。マイナーリビジョンすべきところはあるだろうが、基本アクセプトの方向でいいのではないか。
2024-7-8:JCMから依頼の来た特集号の編集者に関して、返信用のファイルを見ると、サマリー、キーワード、推薦する著者、編集者情報サイトなど、記入すべきことが沢山ある。これをあと3日でするのはとても無理だし、サマリーはそのままジャーナルサイトに載って記事を募集するのに使われるので、いったん作ったら英語添削にも出す必要がある。期日を7月22日に延期してもらえるようメールの返信。
BMC Musculoskeletal Disordersの査読。いい治療成績で、しっかりデータを取ってあり、フォローアップも5年以上、特に言うことのない論文。共著者もそれぞれ役割分担がはっきりしていて、全員が最終的な論文に目を通してサインしたと。中国の市中病院からの報告で、こういうちゃんとした論文は前にも見かけたような気がする。
2024-7-9:BMC Musculoskeletal Disordersの査読。それにしても修正すべき点がない。おそらくこの論文はFoot & Ankle Internationalあたりに一度投稿し、厳しい査読を経たのちに、そもそもネタがつまらないなどといった理由でRejectされた論文なのではないか。前の査読に従って修正したのちにこのジャーナルに出してきたから、ほとんど直すところがないのだと思った。Abstractの中に出どころ不明な数値があったので、そこだけ指摘して提出。あまりにコメントが少ないとちゃんと読んでいないのではと思われてしまうが仕方ない。
2024-7-10:Journal of Orthopaedic Surgery and Research(JOSR)からメール。前回のことかと思ったら、また新しい査読依頼。最近の、朝は自分の論文をやり、夜は人の論文を査読する生活は割と気に入っているので承諾。内容は、踵骨骨折の創外固定と距骨下関節鏡併用の経皮的手術に関するもの。昨日査読したものとあまりに似通った内容なので著者を見てみたが、同じ中国でも全く別の施設からの報告。
2024-7-11:JOSRとBMC Musculoskeletal Disordersからまた査読依頼。それにしても頼みすぎだろ。JOSRは外反母趾手術のラーニングカーブに関する論文。BMCは人工関節手術における術前アルブミン値と輸血の関係に関する傾向スコアマッチングでの比較論文。前者は足の外科領域で、後者は統計的な問題でなかなか査読者がつかないのだろう。なんだか楽しそうなので承諾。これでしばらくは夜やることに事欠かない。
2024-7-12:Journal of Clinical Medicineからまた査読依頼。ここ数日査読依頼が多すぎる。まぁいいか。承諾。
2024-7-13:JOSRの査読。踵骨骨折の治療成績。そんなに問題のない書き方だが、いかんせん新奇性に乏しい論文はアクセプトされるべきなのだろうか。とりあえず書いて提出。だいぶ査読が速くなってきた。1度目はゆっくりと読みながらコメントを書いていき、2度目の読みで変なコメントではないかのチェック。終わったらCopilotで「私は英語が母語でない話者です。私の書いた以下の文をよりナチュラルな英語に改訂してください」と書くと、きれいな英語に変換される。
2024-7-14:JOSRから依頼されたもう一つの論文:外反母趾手術のラーニングカーブに関する論文の査読。Bayesian change point modelとかいう統計的手法を取っているが、これについて全く知識がないので勉強せざるを得ない。
2024-7-15:BMC Musculoskeletal Disordersからの査読。人工関節手術における術前アルブミン値と輸血の関係に関する傾向スコアマッチングでの比較論文。おおむねよく書けている。中国の比較的大きな市中病院からの論文はよく書けているものが多い。たぶんちゃんと指導しているのだろう(国からも研究資金をもらっているし)。1施設で人工関節10年間で2500件というのも中国らしい。
続いてJOSRから依頼のベイズ分析を用いた外反母趾手術のラーニングカーブの論文の査読。スペインのトップクラスの大学の准教授先生の論文だが、偉かろうがなかろうが、こちらが直すべきだと思うことは臆せず言えるのが査読のいいところ。題名を小洒落た感じにしているが、科学的でなく読者に誤解なく伝わらないので、躊躇なく修正するよう指摘。書き慣れている人だけあって、他はさすがにしっかりした記述。ベイズ統計学を振りかざしてラーニングカーブのフェーズに関して恣意的でない判断ができるなどと言っているので、最初に著者自身が3段階にフェーズを設定して解析した始めたのは恣意的ではないのですか、とも指摘。まぁいずれの論文も最終的にはアクセプトだろう。
今日は朝から査読をやって結局夜までかかった。中々自分の論文が進まない。
2024-7-16:最近、母趾種子骨骨折癒合不全に悩むカナダ人の方とのメールが続いているが(その方は関節鏡下自家骨移植術の論文を読んでメールしてきた)、その返信をしてからJCMの査読へ。機械学習などの最新の機器を駆使しているのはわかるが、三次元的な変形である扁平足の診断を、レントゲンの側面像だけから診断しようとしている点がそもそもいただけない。いろいろな方向から撮影するのはそれぞれ評価するべき項目があるからであって、それらと臨床症状を加えて総合的に診断する必要がある。著者は放射線科の先生で、患者さんから訴えを聞くことなく画像だけからものを言わなければいけないので、そこがつらいところ。さまざまな評価をすべき扁平足のレントゲンに関し、側面像のある角度だけを精確に測定するソフトを作ったところでそれは臨床家にとって意味をなさないので、申し訳ないがRejectを勧めて提出。ていうか研究を始める前にちゃんと整形外科医と話し合うべきだ。
2024-7-17:依頼されていた査読はすべて終わったので、JCMから依頼された特集号のゲストエディターに関する作業。まずは特集号のテーマ決め。「Foot & Ankleの最小侵襲手術」にしようかと考えたが、最小侵襲手術と書くと、ただ傷だけを小さくしだだけで実は侵襲の大きい外反母趾手術や強剛母趾のカイレクトミーなど、自分の好きでない手術も含まれる可能性が高いため、「Foot & Ankleの革新的手術」にすることにした。そうすれば発想勝負になるし、小さなアイディアも拾うことができて面白いだろう。ひとまず最近のFoot & Ankle のジャーナルに目を通し、「これは革新的だ」と思える論文を探してみよう。期日は7月22日。まずはFAOを最新号からさかのぼって検索。中々斬新な術式は見当たらない。
2024-7-18:JOSRからまた査読依頼。今度はJOSRの編集長で足の外科では世界的に有名なMaffulli先生の名で来た。Maffulli先生からの依頼とあれば受けざるを得ない。テーマは強剛母趾の人工関節失敗後の関節固定術について。強剛母趾は末期であろうと、うちでやっているような簡単な骨切りで良くなるのに、世界ではこんなことになってしまっている患者さんが沢山いる。早くEFORT Open Reviewsに投稿した強剛母趾のレビューが世に出てほしい。
2024-7-20:JCMの特集号の書類書き。FAOを見て執筆候補者選び。ちょっとでも面白そうな記事はすべてピックアップ。
2024-7-22:JCMの特集号のための執筆者候補選び。Foot & Ankle International, Foot and Ankle Surgery, The Journal of Foot and Ankle Surgery, Foot & Ankle Specialistの過去6年分の論文を見て、面白そうな論文をピックアップ。とりあえず最近の面白いネタは集まったので、それを踏まえてどのようなお題にするのが最も論文が集まりそうか検討。JCMの特集号を組んでいる他のEditorの募集メッセージの閲覧。
全然関係ないが、昨日お問い合わせフォームから来たメールに返答するも、メールアドレスの誤記入か、メールの設定がHotmailからのメールをブロックしているかで届かず。メールが届かない理由のほとんどはこの2つのどちらか。これ以上にその方に連絡する手段もなし。たぶんあちらは、こちらが問い合わせメールを見落としているとか無視しているとか思っていることだろう。
2024-7-23:JCMの執筆者候補選び。せっかく執筆者候補に選んでも、連絡先が書かれていない人もいたり、またORCIDの記載がいい加減な大学所属者もいたりする。大学に所属して科学のフィールドでやっていこうとしているのに、自分の業績が他の人に見えるようにしていないとはどういうことなんだ? そういう人は招待してあげない。とりあえず論文を募集するための告知文やキーワード、執筆者の候補のリストなどを完成させ、JCMの係の人に返送。
続いて、JOSRから依頼の査読。強剛母趾への人工関節失敗後の関節固定術の治療成績。特に問題なく書けているが、つまらない。人工関節が失敗した症例に後から関節固定術をしましたが、良好な治療成績でしたって。。まぁどこかのジャーナルからpublishされるべき内容なのだが、27人もそんな患者さんが出たら途中で反省しろよと言いたくなる。
2024-7-24:査読を仕上げてJOSRに提出。書いた査読をCopilotに「よりナチュラルな英語に改訂してください」と入力して、添削してもらってから提出。おかげで自分の書いた英語に自信が持てるようになった。
続いて、7月1日にMedicinaに提出したアキレス腱断裂の論文の再査読。前回無意味な棒グラフを「箱ひげ図に書き換えよ」とコメントしたが、単に棒グラフを消しておしまいにしていた。箱ひげ図は統計ソフトのグラフ作成機能では描けないでしょう?自分で描くんですよ。だいたいグラフといういかに他人に分かりやすくプレゼンするかという部分を、標準のグラフ作成ソフトに頼っていいはずがない。自分でIllustratorで描かないと。他に、表もいまいち。表のレイアウトも考えて描かないと。表について色々指摘して、今一つな修正をされてまた指摘するのはわずらわしいので、結局作ってあげてしまった。
2024-7-25:Medicinaに査読コメントを送信。とりあえずやるべき査読はすべて提出した。
2024-7-26:またJournal of Clinical Medicineから査読依頼。足関節骨折での脛腓間スクリューは抜釘すべきかというシステマティックレビュー。
7月16日に査読を提出したJCMから、修正後再査読依頼。前回はRejectを勧めたのに再査読せよとは。。要はこの論文をエディターはアクセプトにしたいのだろう。まぁいいや。3日以内にOKかどうか返事せよと。
2024-7-27:JCMから催促のメール。アクセプトの評価にして提出しようとも思ったが、そうするとこちらの査読にあまりに一貫性がないので、前回Rejectの評価をしたのにこの論文を再査読するのは適していない旨を書いて返送。
2024-7-29:JCMから再査読がまだ出されていないようなので提出をと催促のメール。一昨日再査読しない旨のメールを出したのに、それもろくに読まずにまたこちらにメールしてきている。そもそも再査読も承諾していないのに勝手に承諾にしてしまっているし。腹立たしい。こういうあちらのいい加減な姿勢に付き合っているのも時間の無駄なので、アクセプトを推薦した上、「そもそも最初の査読でRejectを推薦しているのに、再査読を要求してくること自体、意味が分からない。エディターがこの論文をアクセプトとしたいのなら、この査読者の見解とは異なるが、それはそれでいいのでは」と書いて提出。
2024-7-30:BMC Musculoskeletal Disordersから、 3月23日に提出した査読に対する修正ができたので再査読を、とのメール。8月8日締め切りで余裕があるので承諾。
2024-7-31:BMC Musculoskeletal Disordersからまたメール。前回の査読で判断できますので再査読しなくて大丈夫ですと。前回の査読で、「この論文はおおむねよく書けているが新奇さはほとんどない。この論文は、結果がいいことと症例数が多いことをエディターが価値あると判断するかどうか次第だ。」と書いたので、エディターがその点を判断してaccept/rejectを決めたのだろう。また、先週JOSRで査読した論文(強剛母趾に対する人工関節失敗後の関節固定術)についての報告メール。結果Reviseになりましたと。
2024-8-1:BMC Musculoskeletal DisordersとJournal of Orthopaedic Surgery and Research(JOSR)から査読依頼。どちらもSpringer Natureグループのジャーナル。絶対にSpringer Natureの査読リストに登録されて自動配信されているはず。BMCのほうは長母趾伸筋腱のスライド延長に関するもの。重度外反母趾だとときどき腱延長が必要になることがあるので興味深い。JOSRの方はまたMaffulli先生からのメールの形で、足関節靱帯損傷の関節鏡手術に関するもの。ここ数年自分のところでも関節鏡手術に切り替えた。これも面白そう。いずれも8月10日締め切りで余裕があるので承諾。何だか両ジャーナルの足の外科の論文は一手に引き受けている感じがする。
Foot & Ankle Specialistからメール。6月終わりに査読したピックルボールのアキレス腱断裂の修正が終わったので再査読お願いしますと。締め切りが8月22日と余裕があるので承諾。これで現在4つの査読がたまってしまった。
JCMから依頼中の足関節骨折脛腓間スクリューは抜去すべきかのシステマティックレビューの査読。システマティックレビューは方法さえちゃんとしていればRejectにはならないだろうが、方法・結果の記述の仕方には巧拙が出る。せっかくまとめているのなら、各論文の結果をダラダラ書いたりせず、一目でわかるような表を工夫してほしい。
2024-8-3:JCMから依頼中の足関節骨折脛腓間スクリューは抜去すべきかのシステマティックレビューの査読。論文からの冗長な引用はばっさり削除し、表の中に簡潔にまとめるよう指示。結局すべての査読コメントを完成させるまでに4時間もかかった。提出。
7月24日にJOSRに提出した査読に対する修正が終わったので再査読をして下さいとJOSRからメール。修正を要求するところが少なかったからか、ずいぶんと修正が早い。大した手間ではないので承諾。8月12日まで。
またJOSRからメール。新たな査読依頼。足底腱膜炎の内視鏡手術について。得意な分野なので承諾。
2024-8-5:7月23日にJCMに提出した特集号の原稿募集文について、短すぎるので書き直すよう言われていたが、その締め切りが今日なので書いて提出。
2024-8-6:JOSRから依頼の足関節靭帯損傷の関節鏡手術の査読。アブストラクトを読みだしただけで、書き方のあまりのお粗末さに嫌気がさす。だいたいダメな論文というのは、略語のスペルをはじめにちゃんと書いていなかったり、英文法が間違っていたり、文頭に数字が来ていたりなど、至る所に不備が見える。論文を科学に永久保管しようと思っているというのに、そんないい加減な姿勢で提出してくる時点でもうダメなのだ。
2024-8-7:Abstractはダメだったが、本文はスペルミスやフォーマットの不備などを除いて、意外とちゃんとしていた。たぶんいずれはアクセプトになるような内容。査読コメントを完成させて提出。ひとつの査読によってほぼ丸一日の時間がつぶれる。それを踏まえてこれからは査読を引き受けよう。そのため今日査読依頼が来たBMC Musculoskeletal Disordersの論文はお断り。まだ4本たまっている。
続いて、BMC Musculoskeletal Disordersから8月1日に依頼の来た長母趾伸筋腱のスライド延長に関する論文の査読。スペインの大学病院からの論文。結果の箇所の英語が他に比べて急に分かりにくくなっている。こういうことが起きるのは、おそらくこのスペイン人は日常生活レベルでは何の不自由もなく英語ができるのだろう。ただ、そういう人が自信をもって書いた英語は、やはりネイティブの書いた英語とは違うので、所々わかりにくい、ということになる。これは英会話の時にフィリピン講師の英語でも感じた。しかしそういう時、こちらが分からないと言うと、何で分からないのかと反応される。妙に自分の英語に自信を持たれても困るのである。
Journal of Clinical Medicine(JCM)からメール。ゲストエディター(=自分)からの足の外科英語論文募集告知のページが出来上がりましたと(こちら)。JCMはPubMedにもWeb of Scienceにも載っているジャーナルだし、Scimago Journal RankingではQ1だし、この特集号で3人までは無料でオープンアクセスになるしで、要はおいしいのだが、どれだけの人がそれを認知して論文を応募してくれるか。こちらから依頼した著者の方々20数名に期待。
2024-8-8:BMC Musculoskeletal Disordersからの長母趾伸筋腱のスライド延長に関する論文の査読。スペイン人の下手な英語の意味するところを解読しなければならないのが腹立たしい。こういうのはまず論文の英語添削会社で添削してもらってからジャーナルに提出すべきだ。
2024-8-10:BMC Musculoskeletal Disordersから新しい論文の査読依頼。足関節靱帯損傷のオープン手術と関節鏡手術の比較論文。承諾。締め切りは8月19日。
長母指伸筋腱のスライド延長の著者を見たら医学生だった。どうりで方法や結果の説明の仕方が今一つなはずだ。ただそれを聞いて楽になった。容赦なく分かりにくいところを指摘しよう。仕事から帰宅後、3時間かけて33個のコメントを書いて提出。RecommendはReject。自分の研究を読者に分かってほしいというのに、こんな独りよがりな分かりにくい言い方に終始する論文は、内容以前にリジェクトだ。
2024-8-11:JOSRから再査読の依頼の来ていた論文(強剛母趾に対する人工関節失敗後の関節固定術;前回は7月23日に査読)の再査読。前回あまり直すところがなかったこともあり、今回は修正によって字数オーバーになってしまっていたアブストラクトを指摘するのみだった。
続いてこれまたJOSRから依頼の足底腱膜炎の内視鏡手術の論文の査読。アブストラクトが背景、方法、結果、結論に分けられていない。これを見ると、Journal of Foot and Ankle Surgery(このジャーナルは他とは違い、構造化しないアブストラクトを要求する)でRejectされ、そのままJOSRに提出してきたのではないかと思ってしまう。
2024-8-12:JOSRからの足底腱膜炎の内視鏡手術の論文の査読。最近はイントロダクションはあまり指摘する気になれない。よほどひどければ指摘するが、だいたいはそんなにひどくはないので、そんなところで労力を使うのは無駄と考えている。研究のメインは方法と結果だ。
2024-8-13:JOSRからの足底腱膜炎の内視鏡手術の論文の査読。どうも手術手技の記載がうそ臭い。足底腱膜炎の内視鏡手術の一般的な方法は視野不良のためとても困難で、その困難さを書かないようにしている手術手技の記載はすぐにわかる。載せている写真も、その困難さを通り過ぎた後の写真で、やたら軟部組織が除去されたきれいな写真になっている。こういう肝心なところをごまかした論文がまかり通るから、それを読んだ外科医は、うまくできないのは自分の技術のせいだと思い込み、この術式をマスターすることに躍起となり、術式そのものの持つ不備の呪縛から逃れられないのだろう。まぁそこは100歩ゆずっても、そもそも足底腱膜炎の内視鏡(しかも標準的な術式)は2000年から2010年くらいにホットだったトピックだし、この論文から新たな知見は得られないしで、論文そのものが他の競合に比べてどうかと言われると、あまり見るべきものがない。その旨を書いて提出。
続いて、BMC Musculoskeletal Disordersから来ていた足関節靭帯損傷の関節鏡手術の論文の査読。JOSRで似た論文を最近査読したので確認したが、同じ中国でも違う著者だった。締め切りは8月19日まで。
2024-8-14:BMC Musculoskeletal Disordersから依頼の足関節靭帯損傷の関節鏡手術の論文の査読。一文一文が長いのと、段落一つ一つが長い。非ネイティブの英語では、一文一文を短くして誤解のないようにするのは最初のお作法。こういう論文を見ると、英語論文校正会社というのはとても大切な仕事だとわかる。
Journal of Clinical Medicineからメール。ゲストエディターについて。これから執筆候補者に招待状のメールを出してくださいと。招待状のテンプレートも送られてきた。そうか、自分で出さなければならないのか。締め切りが10月30日と短いので伸ばせるかとか、オープンアクセス料が3人までタダなのは、いつだれが決定するのかなど、いくつかの疑問点をメールで問い合わせ。送られてきたテンプレートの調整。
2024-8-15:BMC Musculoskeletal Disordersから依頼の足関節靭帯損傷の関節鏡手術の論文の査読。何しろ問題なのが、フォローアップ期間が短すぎること。中央値たった8カ月しかフォローアップしていない。しかもこの論文では、靱帯を縫合しないで、かわりにInternal Braceという人工靱帯を用いている。うちの症例でもInternal Braceが何年か経って切れている症例を見ることがあり、人工物は壊れる可能性があるのだから、短期的によかったからよいという判断をしてはダメだ。なので、「著者たちはこの論文をいったん撤回して、少なくとも2年以上フォローアップし、再提出するのがよいと思います」と書いて提出。
続いて、6月に査読したピックルボールについての論文の再査読依頼がFoot and Ankle Specialistから来ていたので、その再査読。元々そんなに問題のない論文。指摘した個所もちゃんと直っており、特に不満もないのでAcceptを推薦して提出。
さらにBMC Musculoskeletal Disordersから再査読依頼のアルブミン低値で人工関節置換術時に輸血するかどうかを傾向スコアを持ちいて2群比較した論文。どうも変な2群の分け方にしている。普通考えられるのは、輸血したかどうかで2群にわけ、2群をそろえるために背景因子を調整するために傾向スコアを使うはずが、なぜか最初に傾向スコア関係なしにアルブミン値と輸血あるなしだけでROC曲線を描いてアルブミンの閾値を作り、そこで正常アルブミン値とアルブミン低値で2層に分けたのち、それぞれの層で傾向スコアを用いて交絡因子を調整している。間違えではないのかもしれないが、どうしてそんな面倒くさいことをしているのだろう。こういうのは数学の採点を思い出す。そのやり方で間違えではないだろうが、こちらの意図したやり方とは違うので、一応その方法を認めた上で最後まで検討しなければならない。こういうのが一番ややこしい。
2024-8-16:BMC Musculoskeletal Disordersからメール。アルブミンの論文はもうこちらで決定を下しましたので査読を出さなくて大丈夫ですと。ほかの査読者からアクセプトが出たか。甘い。
Journal of Orthopaedic Surgery and Research(JOSR)から査読依頼。外反母趾プラス扁平足に対する手術のケースシリーズ。承諾。8月26日締め切り。
2024-8-18:BMC Musculoskeletal Disordersから査読依頼のメール。「強剛母趾と外反母趾の術式選択に関する足の外科医へのアンケート」という変わり種。承諾。締め切りが8月28日まで。
JOSRから依頼の外反母趾プラス扁平足の手術の査読。毎回思うのが、このようによくある術式の治療成績を特に問題なくきちんとまとめた論文をどう評価するべきか、ということだ。何の珍しさもなく、とにかくつまらない。どうもこういう”真面目さを評価してくれ”と言ったスタンスが好きではない。論文であるからには新発見に心躍らせる感じがなければならないし、自説を人に受け入れてもらえるようにする熱意にあふれたものでなければならない。そういったある種の興奮なしに、ただ淡々と目新しくも面白くもない治療成績を提示して、ハイ真面目に書いたからアクセプトして下さい、というのはどうなんだろう。こういう論文を書くお医者さんはたぶん真面目でいい人なんでしょう、つまらないけど。
2024-8-19:Journal of Clinical Medicineから依頼されているゲストエディターとしてのメール送り。過去6年間の足の外科専門のジャーナルに一通り目を通し、面白そうな記事を書いている著者をピックアップしておいたので、その著者たちに招待状のメール。計25人。差出人の素性が分からないとOKを言いにくいと思うので、自分のORCID iD(世界の科学者に割り振られる固有のID)を貼っておいた。世界では自分の書いた論文が名刺代わりなのだなとつくづく思う。配信不能が3人。
2024-8-20:BMC Musculoskeletal Disordersからの「強剛母趾と外反母趾の術式選択に関する足の外科医へのアンケート」の論文の査読。その国の足の外科医は、重度外反母趾の45%が関節固定、重度強剛母趾の90%が関節固定をしているらしい。
JOSRからの外反母趾プラス扁平足の論文の査読。マイナスはないがプラスもない。
2024-8-21:一昨日JCMエディターとして出したメールに対する返事が、さっそく東欧の某大学准教授先生から来た。これこれの論文を企画していますが、そちらの特集号に貢献できたらうれしいですと。そこまではよかったが、当機関ではオープンアクセス料を支払えないので、無料でない限りは貢献することができませんと。いきなり値切りか。全招待者に対する割引の合計には上限があるので、いきなりここで全額免除を受けるわけには行かない。ただ打診第一号なので、50%割引は保証するとしておこうか。エディターとしての初めての著者とのやり取りはお金の話から始まった笑
JOSRから依頼の外反母趾プラス扁平足の手術の査読。あまり指摘するところがないが、とにかく退屈。査読コメントで何度も「退屈」と書きたい衝動に駆られるのだが、悪口は避けるべきなので言葉を吞んでいる。こういう特に問題なくまとめているが、とにかく陳腐で得るところがない論文は評価されるべきなのか?あまり考えていても何も生まれなさそうだから、それはエディターの判断にゆだねるとして早く終わらせよう。
続いてBMC Musculoskeletal Disordersからの「強剛母趾と外反母趾の術式選択に関する足の外科医へのアンケート」の論文の査読。その国の足の外科学会会員75人全員にアンケートを出し、その回収率が33%だったと。足の外科学会の会員が75人しかいないのなら、ほとんどが知り合いでしょうに。それなら、アンケートの回収率を上げるために、メールで個別に催促するとか、学会で会った時に声をかけるとか、学会長に協力をお願いするとかしたのだろうか。低い回収率は、それだけで選択バイアスがかかってしまうからダメだ。というか、最終的に低いのは仕方がないにせよ、全力で回収率を上げるための努力をしなければダメだ。
2024-8-22:JOSRから依頼の外反母趾プラス扁平足の手術の査読。recommendationはrejectとして提出。JOSRはそれなりに評価されているジャーナルなのだから、こういう凡庸で得るところのない論文を簡単にアクセプトにするべきではないと思う。
続いてBMC Musculoskeletal Disordersからの「強剛母趾と外反母趾の術式選択に関する足の外科医へのアンケート」の論文の査読。今日は午前休だったが、査読の途中で眠くなってやめてしまった。他人の論文の不備を指摘するために読むので、意外と集中しながら読んでいるらしく、JOSRの査読が終わって結構疲れていたらしい。
Foot & Ankle Specialistからメール。ピックルボールの論文の修正が終わったのでまた査読して下さいと。前回アクセプトと送ったのに、もう一人の査読者が何かを指摘したらしい。承諾。
2024-8-24:BMC Musculoskeletal Disordersからの「強剛母趾と外反母趾の術式選択に関する足の外科医へのアンケート」の論文の査読。足の外科医への質問の中に、年間何件外反母趾や強剛母趾の手術を行っているか、というのがあったが、それがこの低い回答率(33%)の原因となっていると思った。そんな質問をしたら、あまり手術をやっていない人は答えたがらないに違いない。案の定、回答した25人中、年間25件以上やっている人が23人答えているのに対し、11⁻25件やっている人が0人、10件以下が2人となってしまっている。まさに回答バイアスだ。こんなに分布に偏りがあったら、得られたデータすべてが真の結果から外れたものになってしまう。それらの問題点や細かい指摘などをまとめてBMC Musculoskeletal Disordersに提出。悪いがReject。
Foot & Ankle Specialistからのピックルボールの論文の再査読。全文まったく一緒。おかしいので著者からエディターへのカバーレターを読むと、「前回二人の査読者からともにアクセプトと言われたのにまたRevisionが来ました。なので同じ原稿を送ります」と書いてある。編集部が何かの手違いでRevisionとしてしまったらしい。他の足の外科の専門誌に比べ、Foot & Ankle Specialistは若干ゆるい感じがするが、こういう手違いを起こしてしまうところが素敵だ。
2024-8-30:JOSRのMaffulli先生から前回の査読(8月6日)に応じた論文の修正が終わったので再査読して下さいとの依頼メール。内容は悪くないのだが、いかんせん英語がひどすぎる論文だったので、次回にRevisionに出す前に英語論文校正会社に出してから提出せよと書いた。見てみると、自分がEnagoなどで受けるようにびっしりと訂正されていた。
2024-8-31:BMC Surgeryというジャーナルから査読依頼。BMCグループの一般医学ジャーナルで、いつものBMC Musculoskeletal Disordersなどと同レベルらしい。外反母趾の術式の比較論文。承諾。9月9日まで。
2024-9-2:Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery(AOTS)から査読依頼。種子骨骨折に対する自家骨移植+スクリュー固定のケースシリーズ。これは自分が査読すべきだ。承諾。見ると、自分の論文もちゃんと2つ引用されている。これを見ると最終的にはアクセプトにしてあげたくなる。
2024-9-3:JOSRから依頼されていた関節鏡下足関節靱帯縫合術の論文の査読。スペルミス以外は特に修正すべき点もないのでそれだけ指摘して提出。しかし、平均フォローアップが1年ちょっとで出してくる論文がとても多い。いつも自分が出しているジャーナルは少なくとも2年のフォローアップがないと受け付けてくれないので、ちょっと物足りなく感じてしまう。
2024-9-5:BMC Surgeryから依頼の外反母趾の論文の査読。使われている専門用語のミスが頻発すると、だんだんと印象が悪くなってくる。
2024-9-8:BMC Surgeryから依頼の外反母趾の論文の査読。Rejectをrecommendして提出。まともなジャーナルに術後3-6か月フォローアップの論文が載ったのではたまったものではない。
2024-9-11:AOTSから依頼の母趾種子骨骨折遷延癒合に対する自家骨移植&スクリュー固定の論文の査読。この術式がうまく行くだろうということは、整形外科医なら誰でも分かっている。それなのにこの術式の報告が今までに一度もなかったのかというと、それが技術的に難しいことは誰しも容易に想像がついていて、避けているからだ。だからこそ、この論文で一番知りたいのは「どうやってその難しい手術をやったのか」という点に尽きる。しかしその部分がちゃんと書かれていない。そこをちゃんと書かないで「ハイ良い治療成績でした」などと言っても、本当にちゃんと手術できたのか疑問に思ってしまう。自分の論文を引用してくれるのはありがたいが、そこは容赦せず、どうやって手術したか徹底的に追及した査読コメントを作成し提出。
2024-9-22:Journal of Orthopaedic Surgery and Research(JOSR)から査読依頼2つ。ひとつは足底腱膜炎に対する内視鏡下足底腱膜切離・経皮的足底腱膜切離・保存の比較。以前にも同様の査読を依頼されたことがあるのでそれを見ると、違う著者だった。いずれも中国人の論文だが、同じようなネタで中国の別のグループからの論文を複数査読することが今までにもあった。電化製品でもほとんど同じ製品を中国の別の会社が出しているのをAmazonで見かけるが、これと決めたものに一斉に集中するのは国民性か。もう一つは足関節不安定症の靱帯再建手術で、同種検体によるものと自家腱(腓骨筋腱)によるものとの比較論文。これまた中国。
2024-9-26:BMC Musculoskeletal Disordersから査読依頼。外反母趾再発に関する論文。査読提出まで10日間あるので承諾。
JOSRから依頼の足関節不安定症の論文の査読。Backgroundのサブセクションの題名が設定されていなかったり、方法欄に書くべき研究の期間の記述がBackground部分に書かれていたりと、ポロポロと不備が出てくる。こういうのはとても印象が悪い。こういう普通にできて然るべきところができていないということは、研究の質も推して知るべしと思われてしまう。
2024-9-28:JOSRから依頼の足関節不安定症の論文の査読。順番がごちゃごちゃ。こういうのこそ共同著者の指導医がちゃんと添削すべきなのに、どうして添削しないのだろう。指導医自体が論文に慣れていないからか?こういうことの指摘は論文の内容とは無関係なことだから、すごくストレスがたまる。英語もひどい。英語非ネイティブは英語校正会社に添削してもらってから出すのは当然だと思うが。こういう、一生懸命なのはわかるが至る所に不備のある論文をそれなりに有名なジャーナルに提出する著者たちは、その後どういうキャリアを積んでいくのだろう。おそらくいつか必ずや査読者にぼろクソに書かれるに違いない。そこでへこたれず論文を量産するところに行けるのだろうか。
JOSRのMaffulli編集長からまたメール。関節鏡下足関節靱帯再建の骨孔に関する論文の査読依頼。Maffulli先生、中国からの論文は全部こちらに押し付ければいいと思ってるだろ。まぁいいや。承諾。
2024-9-29:JOSRからメール。足底腱膜炎に対する内視鏡下足底腱膜切離・経皮的足底腱膜切離・保存の比較論文については、すでに提出された査読によってそれ以上査読が必要なくなりましたので提出する必要がありませんと。やらなくて済んでラッキー。
2024-9-30:JOSRから依頼の足関節不安定症の論文の査読。英語がひどすぎて手術の説明が何を言っているのか分からない。ディスカッションも、本来イントロダクションに書くような先行文献の記述をダラダラと書いている。こういうのはとても多く見かける。ある文献をイントロダクションで引用すべきか、ディスカッションで引用すべきか、もっと著者たちは吟味して、より簡潔な記述を心がけるべきだ。修正すべき点をすべて書いた上で提出。
2024-10-1:BMC Musculoskeletal Disordersからの外反母趾再発に関する論文の査読開始。トルコの大学関連病院からの報告。
2024-10-2:BMC Musculoskeletal Disordersからの外反母趾再発に関する論文の査読。テーマや結果などは興味深いが、方法の書き方がダメすぎる。ただ最終的にはアクセプトになりそうな内容なので、ここをああしろなどと細かく指摘。
2024-10-4:BMC Musculoskeletal Disordersからの外反母趾再発に関する論文の査読。結果の提示が煩雑でわかりにくい、研究の肝となる結果の提示が十分でない、ディスカッションが長すぎる、ただ他の文献を引用しているだけで、自分たちの研究結果に基づいた考察がなされていない、など、改善すべき点が多すぎる。一度はMajor Revisionのチャンスが与えられてもいいだろうが、大きな改善が見られないようならRejectでも仕方がないだろう。
2024-10-7:9月28日にJOSRから依頼されていた関節鏡下足関節靱帯再建の骨孔に関する論文の査読。「関節鏡下に正確に骨孔を開けると臨床成績がよい」というのが著者の主張だが、骨孔の位置が正確に開けられているかどうかのレントゲンやCT評価がなく、その主張を立証できていない。リサーチクエスチョンを解決するような研究デザインになっていないという典型。とは言え、手術方法はかなりシンプルでいい方法。変な主張をせずに普通の2術式の比較論文にすれば、アクセプト方向のRevisionにはなりそう。
2024-10-8:JOSRから依頼されていた関節鏡下足関節靱帯再建の骨孔に関する論文の査読。リサーチクエスチョンと研究との乖離に始めはぎょっとしたが、リサーチクエスチョン部を少し書き換えればそう悪い論文でもないことが判明。ディスカッションで引用されている文献を読んだらかなり勉強になったし、手術法もシンプルでいい方法だ。直すべきところを書いて提出。今回の査読は2日間、計8時間くらいで終わった。
2024-10-10:Foot & Ankle Specialistからメール。足関節不安定症の解剖学的再建に関するレビューの査読依頼。承諾。
2024-10-11:Journal of Clinical Medicineほかいくつか査読をやっているMDPIグループから、Reportsというジャーナルのケースレポートの査読依頼。MDPIからはゲストエディターを依頼されたりもしているので無下に断れない。ReportsというジャーナルはNIHから助成金をもらっている研究はPubMedに載るが、基本載らないジャーナル。こういうところに論文を出しても誰も読まないのに。もしケースレポートを出したいのなら、PubMed Centralで”Case Reports”を調べて、どのケースレポートジャーナルならPubMedに載るかを調べてから投稿したほうがいい。査読に関しては承諾。ハンマー趾などで見られる関節の底側の支持組織の破綻を屈筋腱を移行して再建した2例、というネタ。早速読みだすと、どうもアブストラクトやイントロダクションから書き慣れている感がにじみ出ている。著者をPubMedで調べると、すでに16本英語論文を書いている人。「ケースレポートは名人芸」とどこかの本に書いてあったが、ある程度書き慣れた人のケースレポートは安心して読むことができる。
2024-10-13:ハンマー趾に対する関節固定+腱移行の論文の査読。あまり直すところがない。それにしても今まで何本も書いている著者がどうしてこのジャーナルを選んだのかと思い再度調べたら、Web of Scienceには載っていた。どうもWeb of Scienceの選定基準はわからない。
2024‐10‐14:ハンマー趾に対する関節固定+腱移行の論文の査読。ディスカッションは文献的考察に終始している。どうして自分の研究から分かったことを嬉々として報告できないのだろう。ただ症例を報告して関連する文献を列挙しただけでは論文にならないのですよ。図の説明も貧弱、というかほとんどない。この著者の今までの16本の論文が掲載されたジャーナルを見ると、あまり厳しい査読のところがない。もう少し査読の厳しいところに投稿して痛い目に遭ったほうがよいのに。
2024-10-16:ハンマー趾に対する関節固定+腱移行の論文の査読。既存の術式について2例の症例報告を行い、ただその症例報告でも客観的な治療成績がなく、ただ「よくなった」というだけ、ディスカッションでは文献をただまとめただけ。書き慣れているのはイントロダクションやディスカッションを見ればわかるが、なんだか書き賃だけを求めているようなこういう論文はよしとすべきなのだろうか。これがいつも査読しているジャーナルだったら一発でRejectだが、Reportsという聞いたことのないジャーナルならよしとすべきなのだろうか。
2024-10-17:ハンマー趾に対する関節固定+腱移行の論文の査読。論文のいいところと悪いところをまとめて冒頭に書いた上で提出。「この論文が最終的にどうなったか知りたいですか」をyes/noで選ぶ欄があり、yesを選ぶとrevisionの査読が回ってくると書かれていたので、noを選択。これ以上この論文にかかわっても仕方がない。
続いて、Foot & Ankle Specialistから依頼の足関節不安定症の解剖学的再建に関するシステマティックレビューの査読。まずは読みやすいようにPDFファイルをWordファイルに作り替え。結論は「靱帯再建に用いる材料の違いにより臨床成績に差がない」という結論。つまらなそう。
2024-10-18:Foot & Ankle Specialistから依頼の足関節不安定症の解剖学的再建に関するシステマティックレビューの査読。論文の構造化が甘い。目的、方法、結果、結論に書かれていることそれぞれは対応しているべきなのに、目的では書かれていることが方法と結果では現れず、ディスカッションの中でいきなり初出の結果として書かれている。また、結論は結果から離れたことを書いている。
2024-10-19:Foot & Ankle Specialistから依頼の足関節不安定症の解剖学的再建に関するシステマティックレビューの査読。このシステマティックレビューでは、解剖学的再建に用いた移植腱ごとに、機能評価・臨床評価・合併症を調べているが、その3項目がちゃんと書かれているかマーカーで色分け。合併症に関する記載が方法に書かれておらずいきなりディスカッションに書かれているなどバラバラなことや、機能&臨床評価も方法と結果を一部混ぜて方法に書いてしまっているなどによって構造化されていないことが、色分けして分かりやすくなった。
2024-10-21:Foot & Ankle Specialistから依頼の足関節不安定症の解剖学的再建に関するシステマティックレビューの査読。システマティックレビューは決められた方法論に乗っているので、よほどのことがなければ方法や結果には問題がない。なので、むしろ書き方の点での不備を指摘(その内容は前述に関すること)して提出。
提出して査読から解放されたと思ったら、JOSRから査読依頼のメール。7月15日に査読したベイズ分析を用いた外反母趾手術のラーニングカーブの論文の修正が終わったので、また査読して下さいと。自分の論文の修正や学会発表の準備などがあるから、査読はしばらく受けないようにしようと思っていたが、再査読とあれば仕方ない。承諾。
2024-10-23:続いて10月16日に査読したReportsからメールが来て、修正が終わったのでまた査読して下さいと。期限が3日以内。タダでこっちはやるのだから、せめて1週間くらいの余裕を持って依頼すべきだ。しぶしぶ承諾。さらに10月8日に査読していたJOSRの足関節靱帯再建に関する論文の修正も終わったとのことで再査読依頼。こちらは論文自体興味深いので快諾。
2024-10-24:Reportsから再依頼のケースレポートの再査読。指摘されたところはまぁ問題なく修正されている。術式の詳細は理解できたし、引用文献は勉強になったので、ケースレポートから得られるものとしては十分だろう。なのでアクセプトを推薦して提出。
続いて、JOSRからの外反母趾手術のラーニングカーブの論文の査読。改めて読むとまた不備が出てくる。
Lifeというジャーナルから足底腱膜炎の保存療法に関するRCTの論文の査読依頼が来たが、学会発表、自分の論文修正、査読2本を抱えているときに、1週間以内にという依頼を引き受けるのは無理。
2024-10-25:「ベイズ変化点モデルを用いた外反母趾手術のラーニングカーブの変化点の推定」などと言われても何をやっているのかさっぱり分からないので、Copilotを用いて「『ベイズ変化点モデル(Eckleyら、2005)』をわかりやすく説明して下さい」と聞いたところ、ささっと概略を教えてくれた。しかしその説明の中で分からないところがあったので、さらに「ここの部分をもっとわかりやすく説明して下さい」と聞くと、さらにわかりやすく説明してくれた。こんなことを何度か繰り返していたら、ものの10分でだいたい何をやっているのか分かってしまった。Copilot先生は本当にすごい!こんなものがあったら学校にも塾にも行かないで東大に入れそうなものだ。学習でつまづくときというのは、授業を受けていても、その中の説明で分からないところがあるとそこで引っかかってしまい、そのうち置いてきぼりになるわけだが、Copilotでは、説明のある部分がわからなければ、そこを聞き直せばさらに詳しく説明してくれる。まるで、近くにものすごく優秀な家庭教師がいるようなものだ。
2024-10-27:ベイズ変化点モデルを用いた外反母趾手術のラーニングカーブの変化点の推定。モデルの適応の仕方が間違っているため、変な結果が出てしまっている。これは例えば統計で間違った統計的手法をデータに当てはめてしまっても、コンピューターは計算結果を出してしまうのと同じだ。こういう論文は危険。著者の適応の仕方は不問とされ、結果が独り歩きしがち。いくらベイズ変化点モデルなどという立派なモデルを用いても、使う側が使い方を間違えたらダメなのだ。どのように適応を間違えたために変な結果が出るに至ったかを長文で説明し、Rejectをrecommendして提出。
2024-10-28:続いて同じくJOSRの足関節靱帯再建に関する論文の再査読。手術プロセスの分かりにくさを指摘したら、とてもきれいなシェーマを載せてきた。この図だけでも十分この論文がpublishされる意味がある。後はこちらが直せるところは直してしまい、早めにOKを出そう。
2024-10-29:Foot & Ankle Specialist (FAS)から査読依頼。前下脛腓靱帯の再建術についてのケースレポート。FASの査読は比較的時間に余裕があるので承諾。来週の足の外科学会後でも間に合う。
2024-10-31:以前にも一度査読したことのあるScientific Reportsからまた査読依頼。足関節造影を利用した母趾嚢胞の治療とやら。題名を聞いただけではよく分からない。とりあえず承諾。
2024-11-1:JOSRの足関節靭帯再建に関する論文の再査読。手術法の記載のテンポが悪い。ある部分だけ妙に詳しかったり、肝心なところの記載が雑だったり。たぶん整形外科医としてのキャリアが浅いから、そこはそんなに詳しく言わなくてもわかるとか、そこはちゃんと書かないと伝わらないとか言った整形外科医の共通認識のようなものがまだ身についていないのだろう。自分が指導医だったら全部書き直させるが、査読でいちいち指摘しては今一つな直され方をしても、時間がかかるばかりで不毛だから、目をつぶることに。ただ目に余る不慣れな表現などは修正を提案して提出。
2024-11-2:Scientific Reportsの足関節造影の論文の査読。
2024-11-5:JOSRから修正が終わりましたので再査読してくださいとのメール。修正の指摘が具体的だったからか、早い。第一著者を見たら医学部の学生さんだった。学生さんでこれだけ書けたら大したものだ。だいぶ読みやすくなっており、これならよさそう。数か所さらに直すべきところを指摘して、これを直したらアクセプトでいいと思いますと書いて提出。
続いてScientific Reportsから依頼の足関節造影を用いた外反母趾滑液包の治療の査読。何をどう治療したいのか理解しがたいところがある。
2024-11-6:Scientific Reportsから依頼の足関節造影を用いた母趾ガングリオンの治療の査読。ここまでめちゃくちゃな論文は初めて見た。長母趾屈筋と長趾屈筋とを語句の観点でも解剖の観点でも混同していて、もっともらしい考察に基づいて解剖学的にあり得ないことをして治療した気になっている。
2024-11-7:JOSRからまた修正が終わりましたので査読して下さいと。一昨日指摘した部分がちゃんと直っているので、アクセプトを推薦して提出。
2024-11-8:Scientific Reportsからまた査読依頼のメール。外反母趾の関節の角度に関するもの。今日足の外科学会での発表が終わってひと段落着いたので承諾。
2024-11-10:Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery (AOTS)からメール。9月11日ころに査読した母趾種子骨障害の論文の修正が終わったので再査読してくださいとのこと。承諾。査読が4本たまってしまった。
Scientific Reportsからの母趾ガングリオンの論文の査読。一昨日まで開催されていた足の外科学会でも母趾のガングリオンと長母趾屈筋の関係に関するポスター発表が2演題あったので、それを見たらやっとどういうことか分かった。この論文はまず長母趾屈筋を長趾屈筋と誤記しており、さらに解剖的にも長趾屈筋を長母趾屈筋と間違えているところがあった。こんなめちゃくちゃなこともめずらしい。ここまで根本的に間違えているとさすがに査読で救えるレベルではないので、Rejectを推薦して提出。
続いて、同じくScientific Reportsから依頼の論文の査読。外反母趾の関節の角度に関するもの。韓国からの論文。これはとてもよく書けている。イントロダクションとディスカッションで書かれていることに若干の重複があるので、そこを整理すればアクセプトになりそう。
2024-11-11:Scentific Reportsから依頼の外反母趾の関節角度に関する論文の査読。とてもよく書けているので著者をPubMedで調べたら、なんとこれが初めての論文(過去に共著者が1本だけ)。よほど指導医がちゃんと指導しているのだろう。
Journal of Foot and Ankle Research (JFAR)から査読依頼のメール。外反母趾の足底圧について。依頼より先に、JFARに出している自分の論文の査読を早くやってほしい。承諾。
2024-11-12:Scentific Reportsから依頼の外反母趾の関節角度に関する論文の査読。Corresponding authorを見たら、足の外科論文をfirst authorで8本書いている大学附属病院の足の外科の教授だった。どうりでちゃんと書いているわけだ。minor revisionすべき点を書いて提出。
続いてFoot & Ankle Specialist (FAS)から査読依頼。前下脛腓靱帯の再建術についてのケースレポートの査読。書き方からしておそらくベテラン。Introductionはちゃんとしたことを書いているのだが、各記述に関する引用がない。Introduction通じて1本も引用文献がないのは初めて見た。文献をいちいち探すのがめんどくさいのはわかるが、一応論文なのだから主張の根拠くらい載せてほしい。手術記載もスムーズでいかにもベテランぽいが、ここもIntroduction同様、省略が目立つ。ただここに書いてある方法は、よくある某メーカーの人工靭帯再建用のドリルやらピンやらを別用途に応用して使っているので、とても参考になった。
2024-11-14:おそらく足の外科医としてはある程度ベテランだろうが、論文を書くことに関してはほとんどやったことがないかと思えてきた。引用文献はいくつか挙げているが、本文中の該当する箇所に番号を振っていないし、手術器具のメーカーなどの書き方がいい加減だし、自分の手術と他の手術との比較検討がないし、なぜ既存の術式ではなく新しい術式であるべきだったの動機が薄いし、治療成績の客観的データがないし。腕はいいのだろうが科学者ではないのである。
2024-11-17:おそらく過労により昨夜から熱発。今日はひたすらに寝て回復に努め、ある程度回復した夜になって査読を再開。FASの論文は明後日締め切り、残りの2本は来週末締め切り。
FASの査読。手術のテクニック的にはよいと思うが、それだけでFASに通っていいのか?昔のFASならこのくらいで十分アクセプトされただろうが、最近はどんどん難しくなってきて、ケースレポートは通りにくくなっている。かつ、ケースレポートとしても特別に価値が高いわけでもない。こういう論文はケースレポートを専門とするジャーナルに出したほうが良いのではないか。
2024‐11‐18:昨日に続いてFASの査読。よくよく見れば、書くべきKeywordsも書いていないし、Referencesの表記もジャーナルの規定に沿っていない。おそらく別のジャーナルでRejectになってそのままFASに出したのだろう。こういう舐めた論文はRejectで仕方がない。とはいえ手術記事には有益なところも見られたので、下位ジャーナルに送ることを勧めて提出。
続いて、Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery (AOTS)から依頼の母趾種子骨障害に関する論文の再査読。よく直っている。なぜか一つだけ図が抜け落ちていたので、それだけ指摘して、それが修正されたらアクセプトを推薦しますと書いて提出。
さらに、Journal of Foot and Ankle Research (JFAR)(11月11日)から依頼の査読。外反母趾と靴の関係。こういう研究は、証明したいことは何で、そのために取った方法が何で、両者はちゃんとつながっているかが問題となるが、Abstractを読んでいると何だかごちゃごちゃしていてわかりにくい。雲行きが怪しくなってきた。
2024-11-19:JFARから依頼の外反母趾と靴の関係の論文の査読。Introductionで先行研究の不備の指摘がとげとげしいので、こういう書き方は若いやつに違いないと思って著者をPubMedで調べると、案の定これが初めての論文だった。ところが、Corresponding authorはと思って調べると、何とJFARの前の編集長だった! JFARへはついこの間アキレス腱付着部症のMRI論文を投稿したばかりなのに、ずいぶんといきなり大役を任せてくる。
JOSRやBMC Musculoskeletal Disordersなどで行った査読は41個もあるのに、それがORCIDやWeb of Scienceの個人ページに業績として載せられていないのもどうかと思い(両ページに登録されている査読は27個のみ)、Web of Scienceの個人ページに載せてみることに(ORCIDに自分で記入する方法は分からなかった)。「査読を新たに追加」のボタンを押し、査読した日付を記入、査読した論文のDOIを記入し(すると認証用IDが発行される)、Web of Scienceの査読担当宛に、査読したジャーナルから送られてきた「査読ありがとう」のメールをその認証用IDとともに転送する、という具合。何となく査読ありがとうメールは捨てないでおいていたが、こういうときの証拠になるのか。すぐにWeb of Scienceから自動メールが送られてきて、「ただいま順番待ち105番目です。1時間ほどで認証されます」と。数時間して「認証されました」のメール。
2024-11-20:今日も今まで査読した分をWeb of Scienceに登録。昨日書いた一連の流れをやるのは結構面倒なので、一日2つ登録するのが限界。