【査読中】アキレス腱付着部症のレントゲン・MRI・CT評価

論文日記

概要

アキレス腱付着部症のレントゲン、MRIの評価の論文を同時に進めています。

アキレス腱付着部症のレントゲン評価については、World Journal of Orthopedicsへのレビュー論文を行っているときに思いつきました。Haglund病の各種のレントゲン指標が、アキレス腱付着部症の診断に有効かどうかを調べています。Foot & Ankle International(FAI)に提出し、現在査読待ちです。

アキレス腱付着部症のMRIは、査読を依頼された論文を読んだとき、意外にもアキレス腱付着部症のMRIをしっかりと調べた論文が世の中にないことを知ったのがきっかけです。さらに、CTによるアキレス腱付着部症の骨棘の特徴をまとめた論文作成も開始しました。

経過

2022-12-20:ひとまず進行中の論文は査読待ちや英語添削待ちなどになったので、次の論文に取り掛かることに。アキレス腱付着部症のレビューをしているときに、アキレス腱付着部症のレントゲン評価は論文になりそうだと思ったので、それにすることにした。既存の指標と自分で考えた新たな指標でレントゲン画像の計測を行い、痛みのある踵(手術した側)を1(陽性)、痛みのない踵を0(陰性)として、それぞれの指標の感度・特異度を調べ、アキレス腱付着部症の指標として有効かどうかを調べればよい。それだけでも十分だが、紙面に余裕があるなら、ロジスティック回帰分析で予後予測式を作ってもよいかもしれない。さっそく匿名化した患者さんの表を作成。方法の概略、イントロダクションの一部を日本語で記載。

2022-12-21:文献検索。レビュー論文を書くときの文献検索では、レントゲン画像に関するものは特に集めなかったのでやり直し。手術した患者さんのレントゲンを見ながら、骨棘を評価する指標をどうするか検討。指標は直観的で普遍的で簡便なものにしなければならない。

2022-12-22:文献読み。

2022-12-25:アキレス腱付着部症のレビュー論文の提出が終わったので、査読を依頼されるも据え置きにしていた原稿読み。これまたアキレス腱付着部症に関する論文。中国の大学の放射線科の先生が書いた論文らしい。中国からの論文で12人の患者さんを調べただけだとちょっと物足りない。数が売りの国なのに。

2022-12-26:昨日に引き続き、中国の大学からのアキレス腱付着部症のMRIに関する論文の査読。大学から出された論文を査読していつも思うのは、論文の基本的な枠組み:①Introductionでは、主題の一般的事項の記述から始め、未解決の問題を絞り込み、この論文の目的を宣言する、②Methodsでは、その問題を解決するために自分たちが用意した方法を述べる、③Resultsでは、自分たちの提示した方法に対応する形で結果を記述する、④Discussionでは、自分たちの結果を簡単に総括したのち、その結果と他の文献を比較し、一般化可能性について議論する、⑤Conclusionでは、この論文を通じて自分たちの出した結論(答え)を、イントロダクションで提示した目的に対応する形で提示する、ができていない論文が多すぎる。こういう基本的お作法すら出来ていない論文を、どうして大学から提出してくるのか。若手医師のなっていない論文をきちんと添削するのが大学の教育というものだろう。一発Rejectにしたくもなるが、それでは一生懸命書いた若手医師がかわいそうなので、結局こちらが添削してあげることとなる。

2022-12-27:昨日に引き続き、アキレス腱付着部症のMRIに関する論文の査読。火曜日は水野記念病院の非常勤外来。午前中は史上最高に混んでいたが、午後の遅い時間は史上最高に空いていた。いよいよ世の中は年末モードか。

2022-12-28:昨日に引き続き、中国の大学からのアキレス腱付着部症のMRIに関する論文の査読。ひたすら英作文の練習のようにコメントを記載。非英語ネイティブなのに英語ネイティブに添削してもらわずに論文を提出する神経がわからない。

2022-12-29:中国の大学からのアキレス腱付着部症のMRIに関する論文の査読。とりあえず提出。初めて論文を書くには、まずは数冊の書き方本を読むことと、ジャーナルに提出する前に英語校正会社で添削してもらうことは必須だと思う(それすらやっていない著者が多すぎる)。書き方本を読むことで、論文のお作法以前のところでつまづくことが避けられるし、英語校正会社は、まだ書き慣れていないうちは、内容にまでかなり突っ込んでアドバイスをくれる。ちなみに、自分の読んだ書き方本でよかったと思うのは、①国際誌にアクセプトされる医学論文、②日本人研究者のための論文の書き方・アクセプト術、③雑誌編集長が欲しがる!!医学論文の書き方、④アクセプトされる医学論文を書こう、など。

2022-12-31:レントゲン評価の論文を始めたはいいものの、何しろ肝心なレントゲン評価をしなければ論文は進まない。レントゲン評価は病院でしかできないので、年末年始に進められないのは厳しいところ。今はできることをちょっとやるだけか。
今年は8本論文を書き、5本アクセプト、3本は査読中で終わった。4本目までは順調だったが、5本目のケースレポートの投稿先を2度変更せざるを得なくなったところから調子がおかしくなった。今考えればもう少しできた気もする。そこは来年に生かそう。
来年早々に現在査読中のアキレス腱付着部症のビデオ論文とレビュー論文が通るはず。今始めたアキレス腱付着部症のレントゲン評価を春頃までには完成させたいし、同時進行で、MRI評価もやろうかと思っている。そうしているうちに、夏頃に外反母趾のケースシリーズを出し、秋には外脛骨障害の内視鏡手術の術後2年経過症例数がある程度に達するので、それを出そうと思っている。うまくASMARでアクセプトされれば、ビデオ論文もArthroscopy Techniquesに出せるだろう。それらが計画通りに進めば、来年も7本の論文が確保されることとなる。
論文を書くようになって、自分の中で「楽しく過ごす」ということの優先順位が低くなった。自分の中の人生の価値として、「生まれる→楽しく過ごす→死ぬ」というよりも「生まれる→多少苦しくても何かを残す→死ぬ」のほうが意味あるように思えてきたからだ。だから、年末年始にだらだらとYouTubeなどを観ていると、だんだんと生きた心地がしなくなってくる。論文をやっているときこそが生きている時間なのだ。

2023-1-1:今日から2023年。始動は2時半。レントゲン評価の論文のついでに、MRI評価の論文をやることを決意。暮れにやっていた中国の放射線科の先生の論文の査読がきっかけ。意外にも、アキレス腱付着部症のMRI所見に関する論文が、世の中にほとんどないことを知った。面倒な査読も引き受けてみるものだ。早速PubMedで文献探し。方法の記載(日本語)。MRI、レントゲンともに、患者さんデータの表の作成(評価項目の決定)。レントゲンの文献読み。

2023-1-2:レントゲンの患者さんデータ表の項目完成。あとは病院に行ってひたすら計測するのみ。引用すべき文献を原稿に記入。方法の原稿作成(日本語)。イントロダクションで書くべき内容の構想(日本語)。今回アキレス腱付着部症でやっているレントゲンで患側健側を比較して指標の閾値・感度特異度を調べる研究や、MRIでの所見の整理の研究は、足底腱膜炎でもできることに気づいた。アキレス腱が終わったら次にやろう。

2023-1-4:Excelの表から除外基準に当てはまる症例を別sheetに移動。今回の研究では、患側と健側とでレントゲン所見にどういう違いがあるかを数値化するので、両側例や踵に別の痛みがある症例は除外する必要がある。MRIについても同様に表の整理。まずレントゲン20人分(健側・患側)の測定。1時間半かかる。

2023-1-5:ビデオ論文がひと段落ついたので、残った時間、ひたすらにレントゲン計測。20人分。

2023-1-6:ひたすらレントゲン計測。22人分。

2023-1-7:今日は12人分。というか、その後調べた5人は連続して片足のレントゲンしかなかった(最近は初診時に左右両方のレントゲンを撮るようにしているが、以前は患側しか撮らなかったため。新しく手術した患者さんから順に計測している)。たぶんこれ以上のデータは得られないだろう。計74人に減ってしまうが、これでも十分な人数。

2023-1-8:集計表を統計ソフトで解析できるように整理。統計ソフト(EZR)を用いていくつか解析。アキレス腱の骨棘の長さと遊離骨の有無が、健側と患側に有意差があった。既存の指標はすべて使えないかと思ったら、意外にもChauveaux-Liet角も健側と患側で有意差があった(p=0.01)。カテゴリー変数の統計処置があいまいだったので、いくつかの統計の参考書でχ2乗検定やMcNemar検定の箇所読み。

2023-1-9:データ解析ほぼ終了。解析結果の表づくり。Chauveau-Liet角以外にも、意外と健側と患側で有意差のある指標があった。かなり興味深い結果となったので、それをどううまくディスカッションするか考えないといけない。方法と結果の下書き(日本語)。

2023-1-11:使用したレントゲン指標が発表された論文読み。

2023-1-14:Chauveaux-Liet角の論文読み。1991年の古い論文であるため書き方が多少文学的であることと、フランス人特有(?)のまわりくどさで、言いたいことが簡潔に一カ所にまとめて書かれてないため、読むのが疲れる。20歳の頃よく観ていたフランス映画のとらえどころのなさを思い出した。ただ、アキレス腱付着部症を呈する踵骨の特徴をもっと大局的な見方でとらえていることがわかり、これは新たな視点だ。面白い論文が書けそうだ。

2023-1-15:昨日に引き続き、CL角の論文読み。あまりに読むのが苦痛なので、Google翻訳して読むことに。古い論文のPDFなので、そのままGoogle翻訳にかけても訳してくれない。そこでPDFを文字認識させてWordに変換してから翻訳。読んでみると、日本語にしてもよく分からない(笑)。これは機械翻訳の精度の問題ではなく、やはり書き方の問題。昨日分かった以上に重要なことは書かれていなさそうなので、見切ることに。ふたたび文献検索。併せてMRIの文献も検索。文献のまとめの表作り。ディスカッションで書こうと思いついた内容のメモ書き。

2023-1-16:文献のまとめの表作り。

2023-1-17:文献のまとめの表作り。

2023-1-18:文献のまとめの表作り。意外にもアキレス腱付着部症のレントゲンを解析した文献は少ない。

2023-1-19:文献のまとめの表作り。どう探しても文献が少ない。これはおそらく、アキレス腱付着部症の症例を多数かかえている病院が少ないからに違いない。文献上、最も多い症例数で78例だった。八潮の症例は140例もある。これは大きなアドバンテージだ。文献をいくら探してもこれ以上出てこないので、文献探しは終了。古い論文は文献入手会社(インフォレスタ)に依頼。そろそろディスカッションを練ろう。

2023-1-21:統計で曖昧な部分の見直し。ディスカッションの下書き。インフォレスタからメール。最も古い文献は入手まで2週間近くかかると。

2023-1-22:ディスカッションの下書き(日本語)。自分が出したデータも他の研究のデータも値的には大した違いがないのに、自分のデータでは統計的有意差が出て、他のデータでは有意差が出ていないため、自分のデータ処理(統計的手法の適応)に何か問題があるかもしれないと思い、「全部やり直しか…」などと昨日まで考えていたが、今朝目覚めた瞬間、その答えがぱっと思い浮かんだ。他のデータでは対応のない検定(t検定やWilcoxon検定)を用いているのに対し、自分のデータは対応のある検定(Wilcoxonの順位和検定)を用いている。この順位和検定では、それぞれの対応したデータごとにどちらの値が大きいかを順位付けし、その順位を各グループ合計して、その順位付けの傾向に顕著な差(統計学的有意差)があるかどうかを調べる。この検定で有意差が出たということは、たとえ各グループのデータを合わせた平均値に大きな差はなくても、対応するデータ一つ一つを見れば、常にあるグループに属するデータのほうが大きい傾向がある、ということを意味する。このことが思い浮かんだおかげで、とりあえず自分のデータには落ち度はないと分かりほっとした。また、データの平均値自体は健側・患側ともに大差ないことも考え合わせると、アキレス腱付着部に変性があることそのものよりも、変性にわずかながらも左右差があるとき、より悪い方に発症する、ということも分かった。ディスカッションで書く内容の中で最も難所と思っていたところが解決した。

2013-1-23:東京新聞「紙上診察室」の取材依頼が一昨日来た。新聞の読者からの質問に回答するという内容。質問を読むと「踵骨棘」に関する質問なのだが、それがアキレス腱付着部症なのか足底腱膜炎なのか、もう一つはっきりしない。そこで、両者の違いを写真で説明しながら担当者に問い合わせ。
論文の方は、他の論文を参考にしながら、イントロダクションをどうするか構想。ただ、やはり人の論文は人の論文。結局自分で考えた段落構成になった。その下書き。

2023-1-24:方法の記載(日本語)。ベースライン特性の統計計算。表の作成。イントロダクションの推敲。方法の推敲。

2023-1-25:イントロダクション、方法、結果、ディスカッションの推敲。表の整理。参考文献の順番整理。
東京新聞の担当者の方から返事。患者さんに確認したら、どうやらアキレス腱付着部症とのこと。そうなると新聞の紙面で説明するのはやっかい。一般にアキレス腱付着部症の手術は、”大きな皮切+アキレス腱付着部切離+骨棘切除+さらに奥の骨削り+付着部再建”というおおがかりな手術しかない。内視鏡手術を行っているのは今のところ全世界で自分しかいないが(論文を読んだ医者が世界のどこかでやってみたか?)、それを新聞紙上で紹介していいものかどうか。2月3日取材なので、それまでに作戦を練ろう。

2023-1-26:ディスカッション内に引用する文献の内容の記載。

2023-1-27:ディスカッション内に引用する文献の内容の記載。本文中で引用すべき文献を追加。ディスカッションの推敲。イントロダクションの推敲。

2023-1-28:イントロダクションで引用する文献読み。どうしてもハグルンド病(ハグルンドはスウェーデンの整形外科医。英語読みではハグランド)という用語に触れざるを得ないが、こういう人の名前を冠名とした用語はどういう病態を指しているか定義が不明瞭なので、それを確認するために、その用語が出てきた頃の古い論文を読まざるを得ない。予想通りというか、やはり原著にあたると自分が思っていた(=世にまかり通っている)概念とやや違っていた。だいぶすっきりしたので、再びイントロダクションの推敲。

2023-1-29:イントロダクションの推敲。イントロダクションの英訳。方法の英訳。

2023-1-30:方法の英訳。結果の英訳。

2023-1-31:結果の英訳。ディスカッションの英訳。方法や結果は型にはまった表現で済むので、英訳もそれほど苦でないが、ディスカッションは、その英語でちゃんと論理が通っているか神経を使うので、とても疲れる。リミテーションの記載。

2023-2-1:リミテーションの英訳。結論の英訳。キーワードの選定。アブストラクトの記載。

2023-2-2:文献とまとめの表を見ながら、引用すべき文献と引用の仕方の再検討。本文への加筆。本文に文献番号記入。英語表現の推敲。

2023-2-3:2023-1-23にも書いた東京新聞に掲載する記事の作成。特に原稿を頼まれたわけではなく、記者の方が今日来院し、そこでインタビューした内容をまとめるのだが、そうするとインタビューに長時間かかったり、あちらが作った原稿をこちらが添削したりして、お互いに時間を取るばかりなので、先回りして作っておくことに。そのほうが記者の方も手間が省けていいだろう。前回の朝日新聞の記事のときもそうしたら、ほとんどそのまま掲載された。慣れた内容なのですぐ書けるが、新聞に載るとなると、エビデンスに基づいた内容にしなければならないし、予備知識のない読者にもわかるように書こうとすると、表現をよりわかりやすくしなければならないので、それなりに工夫が必要。
論文のほうは、本文の最終見直し。アブストラクトで結果の書き落としを発見。修正を試みるも制限字数内に収めるのが厳しい。

2023-2-7:2022-12-25に査読を依頼された論文の修正後の原稿の再査読依頼が来た(一昨日)。2月10日締め切り。見ると、自分の他に2人の査読者が査読している。意外とちゃんとしたジャーナルだったことに驚く。

2023-2-8:依頼原稿の再査読。方法と結果の最初の書き方がひどい。このような部分の書き方はほぼ定型的なのに、どうして他の論文を真似しようとしないのだろう。共著者に名前を連ねている大学病院の上級医師たちも、論文に名前を貸すだけでなく、こういうところをちゃんと指導すべきだ。
新聞記事や2本の査読などをやっていたため、1週間ほど自分の論文の方はごぶさただったが、これらが落ち着いてきたので再開。レイアウトの調整。あとは文献に関する記述を少し加えるのと、図を完成させたらおしまい。

2023-2-9:昨日に引き続き再査読。前回指摘した点について修正されている箇所も、一生懸命取り組んで修正したのはわかるのだが、いかんせん書き慣れていないために、あまりいい形に修正されていない。これ以上はいくら指摘しても改善が見込めないので、「以下の文を参考にしながら修正してください」と、こちらで書いてあげることにした。終わったので、ジャーナル(Current Medical Imaging)に返送。人の論文を査読すると、自分の論文もやる気が上がる。
自分の論文の方は、文献的考察の追加。使用するレントゲンの選定(朝5時半に病院に行って撮影)。図の作成。図の説明(図の説明だけで450語も要した)。最後にタイトルページを作成し、ひとまず終了。明日見直して英語添削に出そう。

2023-2-10:全体の見直し。使用する英単語がそれでよいか自信が持てない時があるが、そのときは”Mann’s Surgery of the Foot and Ankle”のKindle本が役に立つ。たとえば”prominence”を調べれば、全6000頁のこの足の外科のテキストの中のprominenceを使用した文がすべて表示されるので、どういう単語と結びつきやすいのかが一目でわかる。あと、その単語のニュアンス的なものがわからない時は、Merriam-Webstarのオンライン辞書で調べて、そのページをそのまま日本語訳するとよくわかる。2時間半で見直し完了。Scribbrで剽窃チェック。特に問題なさそう。Elsevier Language Editing Servicesに英語添削依頼提出。返却が2月16日予定。
レントゲンの論文が終わったので、次にMRIの論文に取り掛かることに。まずは文献読み。文献検索。

2023-2-11:アキレス腱付着部症MRIの文献検索と文献読み。原稿への文献の記入。文献のまとめの表作り。自分の研究では、単にアキレス腱付着部症のMRIの特徴だけをまとめようと思っていたが、読んでいた文献の中で、痛みとの相関を調べているものがあった。これは面白いかもしれない。MRI上信号変化を呈するアキレス腱周囲の組織の中で、どれが最も痛みと相関するかを、痛み指標を独立変数、各組織のMRI上の信号変化のある/なしを従属変数とし、ロジスティック回帰分析で調べれば、どの組織のMRI上の信号変化がもっともアキレス腱付着部症の痛みをよく表しているのかがわかる。思いつくままに、イントロダクションや方法の下書き。統計の参考書のロジスティック回帰分析の箇所読み。全般的な理解が不足しているようなので、もう少し広範囲を読む必要が出た。「医療従事者のためのリアルワールドデータの統計解析(金芳堂)」を通読。

2023-2-12:昨日の日記内で「痛み指標を独立変数、MRI上の信号変化のある/なしを従属変数」というのは逆にすべきではないか、というご指摘があった。これは、例えば両方とも連続変数であると考えれば分かりやすいが、両者の関係を線形回帰分析で比較する場合、xとyを反対にしても、直線への当てはまり具合(適合度)を比較するという意味では大差ない(残差の取り方を縦に取るか横に取るかの違いはあるが)。片方が連続変数でもう片方が二値変数の場合は、当てはめるグラフが直線ではなくシグモイド曲線だ、というだけの違い(ロジット変換して結局は直線に当てはめているのだが)。ここでは2変数の関係を、直線やシグモイド曲線といった”モデル”への適合性で評価しているだけであって、「ある値を入力したらその結果ある値が出力される」という関数的な考えを使っているわけではないので、変数の臨床的な因果関係を考慮して、どちらをx、どちらをyにしなければならない、というわけではない。ただ、MRI所見から痛みの予測式を作ろうとするのなら、原因・結果を考慮に入れ、MRI指標を独立変数、痛み指標を従属変数にしなければならない。しかしその場合は、いくつかの二値変数から連続変数を予測する式を作ることとなり、簡単な数学では済まなくなる。

2023-2-13:MRIの文献読み。
2月3日に取材のあった東京新聞の記者の方からメール。記事原稿の確認。やはりあらかじめ原稿を渡しておくに限る。特に問題なかった。掲載は2月21日予定とのこと。

2023-2-14:文献読み。今回の論文の文献読みでは、読んだ際、自分の論文で使えそうな短文にまとめて、原稿に記載するようにしている。
2月9日に返却した再査読に対する修正が終わったとのことで、再々査読依頼が来た。前回、修正すべき箇所の原稿をほとんど書いてあげたが、修正原稿を見たら、ほぼそのままの形で直していた。出版してもよいレベルになったとは思うので、「満足いく出来だと思います」と返信。

2023-2-15:文献読み。その際出てきたMRIの撮影条件で分からない用語の検索。検索して出てきた日本語サイトより、英語で検索して出てきたサイトを翻訳し、元の英文と見比べながら読んだほうが分かりやすいし、論文にも直結させやすい(科学は英語でできている)。
MRIの論文を書こうとすると、今まで何となく経験で処理していただけで、実はあいまいな理解だったことが沢山あることに気づく。論文を書く意義はこういうところにもある。
論文とは関係ない話だが、お問い合わせフォームから踵骨骨折の質問が来るも、記載されているメールアドレスが間違っているため、返信メールが送れない(Postmasterから ”Undeliverable” のメールが来る)。メールアドレスの記載が間違っていると返信できませんのでご注意ください。

2023-2-16:Elsevierから英語添削の返却。細かな言い回しは無限に直されているが、おおむね問題はなかった。1カ所、統計方法の解釈に関する記述について、「意味がよく分かりません」と書かれていた。この部分は説明がとてもやっかいなところなので、改めて統計の参考書を読み直すと、若干自分の理解が間違っていることを発見。すなわち、論文に書いたその記述自体がそもそも間違っていたため、その部分は全カット。全体を通しての見直し。提出用のファイルを整え、Foot & Ankle International (FAI)に提出。どう評価されるか?
MRIの論文は、いよいよ患者さんのMRIのデータ集め。30人ほどデータを取ったが、微妙な所見をどう判定するか、まだ目が慣れていない。また、痛みのデータに関し、普段から痛い人や、普段は大丈夫だがスポーツをすると痛くなる人など様々で、どうも質の高いデータにはならなさそう。むしろMRIの所見に徹して、その解析を充実させた方がよさそうだ。

2023-2-17:FAIからメール。見ると提出の差し戻しの通知。今回提出した2群を比較した論文では、STROBE(Strengthening the reporting of observational studies in epidemiology)のチェックリストを満たした上で、このチェックリスト自体も提出しなければならないとのこと。指定されたサイトからチェックリストをダウンロードして見ると、22項目もある。これはとてもちょっと直すくらいでは済まない。ここはあせらずちゃんと直そう。いい加減にやってRejectされてからでは遅いのだ。

2023-2-18:STROBEを見ながら修正ポイントをチェック。

2023-2-19:STROBEを見ながら修正すべき点の確認。結局、題名と方法の一部のみ書き換え、チェックリストを添付してFAIに再提出。

2023-2-20:アキレス腱付着部症のMRIの文献読み。

2023-2-21:文献読み。

2023-2-22:文献の検索と入手。Mendeleyと文献のまとめ表の整理。文献検索の途中で、Doiの割り振りが間違っている文献を初めて見つけた。PubMed上のDoiを入力すると、すでに持っている他の文献にたどり着いてしまう。試しにDoiの下一桁を1少なくして入力したら望みの文献にたどり着けた。確かにこの2文献は、同じ雑誌の連続した記事で、題名もよく似ている。Doiが間違って記載されるのは文献にとってかなり痛い。
提出したレントゲンの論文の “Status” はまだ “Awaiting Admin Processing”。

2023-2-23:FAIからメール。STROBEの書類にまた不備があると。「記入可能なチェックリストを提出して下さい」とあり、またリンクが貼ってある。そこに行ってSTROBEのファイルをダウンロードすると、前回のファイルとは違って、今度のはチェック項目の横に該当するページや該当する記述を書く欄がある。これならどう記入するのか分かる。前回のメールはリンクが違っていたよう。
アキレス腱付着部症の文献読み。今日は私用で新幹線に往復5時間くらい乗っているが、その間、先日急遽買った型落ちiPADで文献を読んでいる(持っていたWindows Surfaceが壊れたため)。これはとても便利。論文は大きな文字や小さな文字が入り混じるが、それを素早く最適な大きさに調整できるところがよい。

2023-2-24:STROBEのチェック表の記入欄に記入。
東京新聞から、2月3日に取材を受けたアキレス腱付着部症に関する記事の載った新聞が送られてきた。見ると、予想以上に老けた顔写真が載っていた。記事はあらかじめ用意していたのでほぼ意図通りの記事になっていたが、顔写真が意図通りではなかった。写真も自分で用意すべきだった。。

2023-2-26:STROBEのチェック表の記入欄に記入。STROBEのチェックリストの要求に対して該当しているとも解釈できる、といった曖昧な表現の場合、その表現でよしとするか、思い切って書き換えるかを迷う場面が多く、欄を埋めるのが苦痛。

2023-2-27:STROBEのチェック表の記入欄に記入。先週後半は私用や仕事の忙しさから、あまり論文に集中できなかったので、また今朝から仕切り直し。やはり朝は論文をする気になる。その理由は、①朝は暗いし静かだし外出もできないので、気が散らない、②仕事に行くまでという時間の制約がある、③パソコンをつけただけですぐに「やろう」という気持ちにセットしやすい、④疲れていない、などだろう。チェック表の記入が終わったので、FAIに提出。
昨日・一昨日と東大入試があったので、論文の気晴らしに問題を閲覧。英語の分量が昔よりずっと多い。この量をこなすのには相当に英語ができなければならないが、学問の最先端はすべて英語で記述されていることを考えれば、英語ができない人は学問をやる資格がないと見なされても仕方がないだろう。数学は1980年代後半~1990年代前半のようなクレイジーな問題は影を潜め、まっとうな勉強をしっかりやれば得点できるものばかり。いい時代になったものだ。国語はここ数十年大きな変化なし(名物「第二問」の作文がなくなっただけ。これについては名著「東大入試至高の国語『第二問』」をご覧ください)。理科は、昔に比べて問題が小分けに分かれていて、部分点は取りやすくなっただろうが、完答は難しくなった。一般に東大受験生の理科への取り組みは遅い!東大受験で有名な「鉄緑会」という塾でさえ、理科は高2から。数学と理科は同じ点数配分、かつ理科の学習内容も膨大なのに、どうして数学ばかりムキになって勉強して、理科はたった2年間で何とかしよう(or 何とかなる)と考えるのか。理科は勉強しさえすれば着実に得点に結びつくのだから、早い時期からやればいいのに。
今日は勤務時間後も少し居残って、アキレス腱付着部症患者さんのMRIのデータ収集(15人分)。

2023-2-28:アキレス腱付着部症のMRI文献を、論文の引用として使える文にして原稿に記入。ふと思いついたのが、強剛母趾に関しても、症候性と無症候性の足を比較したレントゲン論文が書ける。提出したばかりのアキレス腱付着部症のレントゲン論文の査読で、ダメ出しを確認してから取り組もう。

2023-3-1:アキレス腱付着部症のMRI文献を、論文の引用として使える文にして原稿に記入。
画像にはレントゲンやMRIの他、CTもあるので、CTによるアキレス腱付着部症の骨棘の特徴を記述した論文も面白いかもしれない。さらに、足底腱膜炎や強剛母趾でも、レントゲン・MRI・CTがそろっているので、同様の論文を作成することができそう。臨床成績をまとめた論文は、ある程度の症例数やフォローアップ期間がないと論文にはできないので、出せる時期がおのずと決まってしまう。外反母趾は夏、外脛骨障害は冬以降でないと書けない。それまでは画像測定で書ける論文を書いていこう。
さっそくアキレス腱付着部症の骨棘CT画像のフォルダ作成。匿名化された患者さんのデータ表はMRIで作ってあるので、それを使用。文献検索すると、CT評価はアキレス腱障害という形で1つのみ。アキレス腱付着部症の症例をたくさん持っている病院などそうそう他にないので当然と言えば当然。イントロダクション、方法、ディスカッションなどで思いついたことのメモ。

2023-3-2:レントゲン論文の”Status”が”Awaiting Reviewer Assignment”に。
MRI論文の進みが遅い理由は、病院の電子カルテでMRIの画像を見ながら所見をパソコンに記入する時間帯が限られている(平日夕方)ことだとわかった。その時間帯は仕事が押していることもあるし、疲れすぎてやる気にならないことも多い。画像が手元にあれば家でもできる作業なので、全部手元に保存しておくことに。140人分のMRI画像を匿名化してスマホで撮影。スマホの画像をOneDriveクラウドにアップロード。

2023-3-3:昨日撮影した画像の名前の付け替え。

2023-3-4:OneDriveにアップロードしたMRIの画像を見ながら所見書き。ここで先日買ったiPADが役に立った。画面が二つあると、一つのパソコン内でいちいちwindowを切り替えなくて済むので楽(画面を二分割すると画像が小さくなって見にくい)。iPADは画像の大きさを自由に調整できる点もよい。

2023-3-5:MRIの画像を見ながら所見をExcelの表に記入。

2023-3-6:MRIの画像を見ながら所見をExcelの表に記入。所見を記入しながら思いついたことを原稿にメモ。データを取り始めて70人くらいまでは、所見があまりにもとりとめがなくて、これは本当に論文になるのか不安だったが、100人を超えると、だんだんとおおまかな傾向が見えてくるものだ。ひとまず全部の所見を取ったが、最初の方は画像の見方が安定していなかったので、もう一周見直す必要あり。3年以上前に手術した患者さんの紙カルテ取り寄せ。研究計画書、倫理審査申請書の提出。second look開始。二度目は進みが早い!

2023-3-7:MRI所見の見直し。

2023-3-8:MRI所見の見直し。方法・結果の下書き。ふとアキレス腱付着部症のMRI所見のType分類を思いついた。さらに、この分類を思いついたことに伴って、残りのMRI所見を、アキレス腱付着部症の病態と関連させながらどのように統計解析すればいいか見えてきた。何とかなりそうだ。病院では、写し忘れていた写真の撮影や所見の判断に迷った症例の確認、基礎情報の記載など、ひたすらMRI所見の表の空欄を埋める作業。

2023-3-9:MRI所見の表の空欄補充。Type分類として思いついたが、この分類は重症度と相関していそうなので、Grade分類とし直した。一般に重症度はGradeが1から3に進むにつれて悪くなるので、そのように番号の振り直し。表の作成に関してはすべて終了。原稿に方法のメモ書き。試しの統計解析。カテゴリー変数の統計に関する参考書読み。

2023-3-10:ベースライン特性の表の作成。

2023-3-11:Gradeごとに所見を集計した表の作成。これで見る限り、ある項目はGradeがその状態をよく表しているが、別の項目はGradeの区分けが役立ってない。ということは、このGrade分類のしかたに不備があるのだろう。もう少し生データの表を虚心に眺める時間が必要なようだ。

2023-3-13:別の所見を用いて分類しなおし。いろいろ試してみて、より多くの症例を包括したクリアカットな分類を考え出さなければならない。

2023-3-14:①骨棘、②アキレス腱の変性、③部分断裂(アキレス腱付着部症では多い)、④骨棘骨折または遊離骨の有無、の4つから分類し直したところ、かなりいい分類ができた。前回はアキレス腱付着部周囲の浮腫から分類したがダメだった。考えてみれば当たり前だ。浮腫は非特異的な反応性の症状なのだから、アキレス腱付着部症という特異な疾患の状態をきれいに分類できるわけがない。やはり疾患に特異的な状態で評価しなければダメだ。というわけで、この4つの項目をピックアップして、Grade1:①、Grade2A:①②、Grade 2B:①④、Grade3A:①②③、Grade3B:①②④、Grade4:①②③④ としてみたら、手持ちの128 症例すべてが一意に分類できた。これなら行けそうだ。方法、背景、リミテーションなどのメモ書き。データの集計。結果の表の作成。

2023-3-15:結果の表の作成。ディスカッションのメモ書き。方法・結果の記載(日本語)。

2023-3-16:方法の記載。表のレイアウトの修正。統計解析の追加(Cochran-Armitage検定)。検定用にアレンジした集計表を新たにいくつか作らなければならないのが煩わしい。
日記を読まれた方から、Grade評価には測定者間の信頼性を検証したほうが良いのではとメールをいただいた。確かにその通りだ。ただ、別の医師にMRIの画像を読んでもらうことをお願いすると、その医師も共同研究者に入れなければならず、すべての論文を単独著者でパブリッシュさせようと目論んでいる自分にとっては受け入れがたい(汗)。そのかわりに、日を改めてもう一度すべてのMRI画像をGrade評価し、測定者内の一致率は出すことにしよう。

2023-3-17:昨日のメールの方から「できあがった分類をテストしてもらうだけの場合は共同研究者に入れる必要はない」とのご指摘もいただき、せっかく思いついたグレードも、何の検証もされなければ論文として受け入れられにくくなるはずなので、やはり信頼性の検証はすることに決めた。そうだ、仲良しの放射線技師さんに頼んでみよう。まずは信頼性の統計解析に関する参考書読み。

2023-3-19:信頼性に関するインターネットサイト(英語のサイトを日本語訳して)読み。どうも肝心な統計処理について書いてあるサイトに当たらないので、手持ちの参考書を参照。すると「医科統計学が身につくテキスト」によく書いてあった。2人の測定者の一致or不一致の度数を、Grade1~4の6×6のマスに書き込み、期待度される一致度数をχ2乗検定と同じ要領で計算、それを用いて、コーエンのκなる値を算出し、一致率を評価すればよいらしい。仲良しの放射線技師さんの他に、いつも外来に非常勤で来ている伊奈先生(患者さんに人気の女医さん)にも頼んでみよう。テストをお願いするためのUSBとお菓子の購入。方法、ディスカッションなどの下書き(日本語)。

2023-3-20:昨日まで放射線技師さんに渡そうと思っていたが、意外とMRIの読みがずれる可能性が高いと思われたので、とりあえず医師だけからデータを得ることに方針変更。同僚の諏訪先生(マラソン2時間半を切るスポーツ医)も、今大学院でアキレス腱付着部症に関する論文を書いているので、アキレス腱付着部症に興味があるだろうからお願いすることに。伊奈先生とともに、画像データ、依頼文、集計表、画像例などの入ったUSBとお礼のお菓子を渡した。早速諏訪先生は読影を終わらせてデータを渡してくれたが、けっこうグレードがずれていた。κ係数を計算すると、κ=0.49。これは、κ係数の評価で言うと6段階評価のうちのmoderate(上から3番目)に該当で、悪くはない値だった。
2023-3-21:春分の日。World Baseball Classic(日本対メキシコ)を朝からYouTubeで観ていたら疲れてしまい昼寝。起きたら18時だったが、このままダラダラしていたら今日生きていた意味が何もないので、少しは論文を進めることに。文献をイントロダクション・方法・ディスカッションのどこで引用するか整理。文献を絡めながらイントロダクションやディスカッションの下書き(日本語)。

2023-3-22:イントロダクション・方法・結果・ディスカッションの下書き(日本語)。

2023-3-23:Kappa係数の値自体は手計算でも何とかなるが、95%信頼区間はとても計算しきれないので、結局統計ソフトを使うことに。統計ソフトEZRの標準機能では、N×Nの表のKappa係数は計算できないので、EZRのR Console画面を用いて、R(統計のプログラミングソフト)で計算する必要がある(EZRは、Rを医療用にカスタマイズさせた統計ソフト。もとのRとしても使える)。”kappa r package”でインターネットで調べて出てきたサイトのRのプログラミングをコピペした上、自分のデータに書き換えて、EZRのR Console画面に入力したら、すぐに値が求まった。こんなにコピペが重宝したのは初めてだ。方法・結果の下書き(日本語)。大丈夫そうなところは部分的に英訳開始。

2023-3-24:FAIのSaltzman編集長からお詫びのメール。アキレス腱付着部症のレントゲンの論文に対し、なかなか査読者がつかないらしい。アキレス腱付着部症の最小手術に関するレビュー論文も、3か月でやっと一人査読者がついただけで、アキレス腱付着部症はどうやら人気がないようだ。考えてみればそうかもしれない。自分はたまたま内視鏡手術を考案したから、毎週のようにアキレス腱付着部症の手術をしているが、それまでは、アキレス腱付着部症の手術は数えるくらいしか行ったことがなかった。足の外科医でもほとんどが「あまりアキレス腱付着部症の手術はしたことがない」とか「できれば手術したくない」などと思っているだろう。それにしても世界で最も足の外科医の査読者を抱えているはずのFAIですら査読者を見つけられないのは驚きだ。しかしこういう状況を目の当たりにするとますます元気が出る。アキレス腱付着部症に関しては世界的に見ても独り勝ちの状況のようだ。

2023-3-25:方法・結果の英訳。ディスカッションの下書き(日本語)。

2023-3-26:ディスカッションの英訳。

2023-3-27:ディスカッションの英訳。統計用語の使い方が合っているかとか、文献を正確に引用できているかとか、論理的におかしなことを言っていないかなどをチェックしながらの作業なので、1段落完成させるのに1時間近くかかる。リミテーションの下書き・英訳。

2023-3-28:使用しているMRIについて検索。設定などは直接放射線技師さんに聞かなければ解決しない点も多いので、これは水曜以降に回すことに。ディスカッションの英訳。結論・イントロダクションの下書き。結論は、イントロダクションの目的にしっかり対応していなければならない(よくずれる)。結論・イントロダクションの英訳。だいぶできてきた。

2023-3-29:図に使う写真の選定。図の作成。図の説明。アブストラクト用に原稿から文をピックアップ。アブストラクトの語数調整。放射線技師さんにMRIの設定について問い合わせ。残った方法の一部を英訳。
…とほぼ完成まで来たところで、選んだ写真を眺めているうちに、もっといい分類を思いついてしまった。。Grade 2BをGrade 1Bに、Grade 3BをGrade 2Bに、Grade 4をGrade 3Bに変えると、Grade 1は腱の変性なし、Grade 2は腱の変性あり、Grade 3は腱の断裂ありとなり、サブクラスAは骨棘が大きくならないタイプ、サブクラスBは骨棘が大きくなるタイプ、とクリアカットになる! 分類し直すとなるとすべての統計がやり直しになるが、しかしこちらのほうがずっとよいのだから、そのままにするわけにはいかない。数点差で落ちてもう一浪が決まった気分だ。

2023-3-30:原稿中のデータの消去。本文の書き換え。写真を見ながら再度Gradeし直し。「グレードはアキレス腱の変性の程度を表し、タイプABは骨棘の性質を表す」という意味に変わったら、かなり分類がやりやすくなった。1時間ほどで全部やり直し、以前のグレード評価と見比べたら、若干評価が変わっていたものもあった。このグレードなら、測定者間一致率ももう少し高くなりそう。諏訪先生と伊奈先生には申し訳ないがもう一度テストをお願いしよう。評価し直したグレードを用いてデータ解析のやり直し。

2023-3-31:Cochran-Armitage検定のやり直し。他の統計解析はすべて集計表をそのままEZRに入れればできるが、この検定はわざわざ別の形の集計表に作り直さないとできない。それがとても面倒。

2023-4-1:通読しながら表現の手直し。

2023-4-2:Cochran-Armitage検定のやり直しの続き。浮腫に関するデータは大したものではなさそう。やはり浮腫というのが非特異的な反応なので、グレードごとの違いをきれいに反映しないようだ。このデータは捨て去ってしまい、かわりに伊奈先生、諏訪先生、自分の3人の測定者内の一致率を乗せた方が科学論文としては頑健と言えるか。ただ、浮腫は目立つ所見なので、まったくその部分を調べず、ただ分類作りに終始するのも恣意的な印象になる。浮腫に関するデータを捨てるかどうかはもう少し考えよう。明日伊奈先生、諏訪先生に渡すお菓子の購入。自分の一致率を調べたら、Kappa係数が0.53とそれほど高くなかった。一番ズレたのが腱の変性の評価だった。腱の中の微妙な色の変化を陽性とするか陰性とするかが違っていた。確かに腱の変性は連続的に起こっているから、画像上評価が難しいものがあって当然だ。本文の修正。

2023-4-3:通読して修正すべき箇所のチェック。

2023-4-4:昨日は伊奈先生は発熱でお休みだったので、諏訪先生にだけテスト用のデータとお菓子を渡した。論文の方はほとんど終わっているのだが、最後のデータ入手で時間がかかっている。たぶんあと2週間はかかりそう。時間がもったいないので、次の論文を始めよう。アキレス腱付着部症のCT画像にするか外反母趾にするか考えた結果、外反母趾にすることに。

2023-4-6:外反母趾は文献が異常に多いため、遅々として進まない可能性も高い。アキレス腱付着部症は、文献検索も少ないし、患者さんデータファイルなど使いまわせる部分も多いので、両方同時に進めればいいか。

2023-4-7:昨日諏訪先生からファイルの受け取り。こちらが水野記念病院での外勤日だったりして、直接渡せるチャンスがなかったと。仕事が早い!諏訪先生にグレードについてどうだったか聞いたところ、改訂したグレード分類の方が、腱の変性具合と骨棘だけを見ればいいので楽だったと。やはり作り変えてよかった。今日伊奈先生にファイルを渡そうとしたところ、インフルエンザの出勤停止のため今日も休みだった。なので来週月曜に持ち越し。諏訪先生のグレードと自分のグレードとの一致率の計算。これは前回の分類で出した一致率とほとんど変わらなかった。つまり、グレード分けの煩雑さは解消されたものの、腱の変性や断裂などの判断の微妙さによる測定者間のずれは変わっていないことを示した。

2023-4-8:諏訪先生と自分の2回目の一致率の表作り。

2023-4-9:全体の通読と表現の修正。

2023-4-10:全体の通読と表現の修正。諏訪先生の2度目の結果により、1度目も2度目も一致率に大差ない結果になると予想できたので、伊奈先生の2度目のデータが来る前に論文を仕上げてしまうことに。仕上げてElsevierに英語添削を依頼している間に伊奈先生からのデータを入手できればよいだろう。伊奈先生は元気に出勤。早速テストのお願いとお菓子。

2023-4-11:全体の通読と表現の修正。ディスカッション部。引用文献の整理。本文に引用文献番号の記入。

2023-4-12:全体の通読と表現の修正。注意しながらずっと英文を読み続けるのはとても集中力が持たないので、自分の書いた英文を段落ごとにGoogle翻訳で翻訳して、ナチュラルな日本語になっているかを確認し、そののちに改めて英文を読み、修正をするようにしている。終了。キーワードの選定。キーワードはMeSH termsから選ぶとよいとWorld Journal of Orthopedicsのレビュー論文を書いたときに教えられたので、引用文献をPubMedで調べて、そこに載っているMeSH termsから選択。最後にFoot & Ankle International (FAI)の投稿規定に合わせてセクションのフォントを変えるなどして完成。アブストラクトは328語と、投稿規定300語を超えているが、これはElsevierに調整してもらおう。いつものようにElsevier Language Editing Servicesに提出。返却は4月18日予定。

2023-4-14:伊奈先生からファイルの受け取り。仕事が早い!新しい分類になってgradeの判定は早くなったと。早速計算するとKappa係数は0.43。あとはElsevierの添削を待つのみ。

2023-4-15:FAIに提出中のレントゲン論文にやっと査読者がついたよう。”Current Status” が “Awaiting Reviewer Scores” に。

2023-4-17:Elsevierから添削の返却。早速ダウンロードしてチェック開始。

2023-4-18:提出用のファイルの整理。今日提出しようと思っていたところ、タイトルページの中に病院の倫理委員会からの認定番号を書き忘れていたことに気が付いた。これは病院に行かないと分からないので、明日でないと出せない。仕方がないので、それ以外のすべてをFAIのsubmission siteでアップロード。あとは認定番号を書いたタイトルページをアップロードすればいいだけにしておいた。

2023-4-19:タイトルページに倫理委員会の認定番号を記入し、FAIにアップロード。全体を確認したのち提出。編集長のSaltzman先生にしてみれば、2023-2-26に出されたアキレス腱付着部症のレントゲン論文に対する査読者がなかなか見つからず、なかなか見つからないので詫び状まで入れ(2023-3-24)、やっとのことで査読者がついたと思ったら(2023-4-15)、今度はMRIの論文の追い打ちが来た。どんな顔をするのか楽しみだ。
とりあえず色々と一段落したので、CT論文を本格的に開始。まずは125人分のCTを匿名にしてすべて撮影。携帯の写真をOneDriveに移し替え。

2023-4-20:昨日撮影したCT画像のファイル名の書き換え。所見の記載。

2023-4-21:所見の記載。とりあえず一通り所見を記載したが、まだ分類が見えてこない。どうしてCTの分類が難しいかというと、レントゲンだと2次元画像なので計測の指標が取りやすいし、MRIだと色々な組織が写っているので、その組み合わせで分類を思いつきやすいのだが、CTだと3次元的なので計測の指標が取りにくく、MRIのように色々な組織が写っている訳でもなく、また立体(骨棘)の見た目の分類は主観的になりやすいことなどに因るだろう。これは相当うまく作戦を練らないとお粗末な論文になりかねない。

2023-4-22:FAIからMRIの論文に関するメール。観察研究に関するガイドラインSTROBEのチェックリストを出してくださいと。これはレントゲンの論文の際にも指摘されたこと(2023-2-23)。これはアホだ。
FAIから立て続けにメール。今度はレントゲンの論文に関して。Rejectだった。査読者のコメントを見ると、2人がMinor Revision(そのうちの一人は”Congratulations”と書いてあった)、1人がRejectで、編集長はRejectのほうを採用したよう。Rejectの理由としては、レントゲンがすべて非荷重位でのレントゲンだったことにつきるようだ。これが問題であることは分かっていたので、ちゃんとリミテーションに「非荷重位での撮影なので、荷重位よりもcalcaneal pitchは大きく、CL角は小さく測定されるため、他の論文と測定値の比較はできないが、この研究内での左右の比較には影響しない」と書いていたのだが、2人の査読者はそれでよしとするも、1人の査読者と編集長はダメと判断したようだ。たぶんこれは、FAIのような一流のジャーナルでは、こういう方法上の欠陥をかかえる研究を認めるわけにはいかないからだろう。まぁ仕方がない。次はアキレス腱付着部症の大好きなMaffulli先生が編集長のJournal of Orthopaedic Surgery and Research (JOSR) にするか、Foot and Ankle Specialistにするか。もしくは、Foot and Ankle Surgeryに出してみる?

2023-4-23:査読コメントの確認。その中で第1査読者のコメントには驚いた! この査読者は、「この論文は既存のレントゲンのパラメータの感度・特異度が低いことを浮き彫りにしていますが、それについてディスカッションで言及されていません。結論では感度・特異度の問題についてもっと目立つように書いてください。」と書いていた。一度読んだだけでは何を言っているのかよく分からず、しばらく考えたのち、「他の文献では、これらのパラメータは罹患者と健常者に有意差がないとばかり述べられているが、この研究では、そんなパラメータも、健側・患側の差分を取ればしっかりと差が出る。これはつまり、これらのパラーメータが感度・特異度の高い検査ではないことを意味し、罹患者と健常者との違いを検出するには不向きであるが、ある人の左右差を見るための検査としては有用である。」ということだと気が付いた。この査読者は、この研究でレントゲンが非荷重位での撮影だったことを不問とし、論文をMinor Revisionと評価した査読者だが、この論文の良さは上述のことだからこそ、他の(荷重位の)論文との測定値の比較には意味がなく、この研究内で統一して非荷重位としているならばそれでよい、と判断したのだろう。そしてこの査読者は最後に「この研究は、手術のdecision makingにどのように役立ちますか?」と投げかけて終わっている。すなわち、「レントゲンパラメータは、患者さんでの左右差を見るためのツールとしては利用できそうだが、では、それをある患者さんの手術の決定にどのように生かしたらよいのか、という点を考えよ」とヒントまでくれている。 著者が気づいていない論文の良さを一読で見抜いた上、それをさらっとしたコメントで端的に示すとは、どれだけ頭がよいのだろう!
質の高いジャーナルに投稿する理由はここにもある。日常の仕事をしていたり、ちょっと学会で発表するくらいでは、なかなかこういう鋭い指摘を受ける機会はないが、質の高いジャーナルに出した時だけ、このようなこちらが思ってもいなかった鋭い指摘を受けることができる。やはりFAIに投稿してみてよかった。

2023-4-24:差し戻しになっているMRIの論文に関して、STROBEチェックリストの作成。できあがったのでFAIの提出サイトにアップロードし再投稿。

2023-4-25:レントゲン論文の投稿先の検討。ヨーロッパ足の外科学会ジャーナルであるFoot and Ankle Surgeryの投稿規定を読むと、アブストラクトが150語以内。これだとFAIに出した論文の大幅な書き換えが必要になるので避けたい(FAIのアブストラクトは300語以内)。最近何度が査読したJournal of Orthopaedic Surgery and Research (JOSR)は、編集長のMaffulli先生はアキレス腱付着部症が大好きなので、ここにしてみるか。投稿規定を見てもあまり厳しくないので、書き換えも少なさそう。修正すべき点の確認。ジャーナルホームページを見たら、自分が査読した論文が昨日publishされていた。

2023-4-26:JOSRに向けて論文の修正開始。Maffulli先生に論文を読んでもらうことを考えたら、だいぶやる気がわいてきた。まずはFAIからの査読コメントを読みながら、修正のアウトラインのメモ。
査読コメントというのは概して腹立たしいものだが、こういうコメントをもらえるのは、専門医にとって良いことだと思う。拝聴しないとRejectされるという完全に弱者の立場なところが良い。論文を書かないと、自分の専門に関して他者から批評される機会を持たないから、ついつい”おエラく”なってしまいがちだ。

2023-4-27:査読コメントを再読して修正のアウトラインに加筆。

2023-4-28:査読コメントで指摘された箇所にマーキング。自分で書いたことを結構忘れている。

2023-4-29:今度はMRI論文について編集長のSaltzman先生からメール。Rejectなのだが、いつもと少しメールの感じが違っていた。「提出物を慎重に検討した結果、主にFAIのスペースが限られていることと、患者さんの転帰を改善する可能性が最も高いと思われるものを出版することに重点を置いていることから、Foot & Ankle International での出版の可能性を提供することはできません。 読者に大きな影響を与える可能性があるため、放射線学ジャーナルへの投稿を検討することをお勧めします」とのことだった。なるほど、足の外科の論文なら何でもFAIの対象となると思っていたが、FAIにも好みがあったのか。最後の文を見ると一応論文は評価してくれているよう。放射線学ジャーナルとは考えても見なかった。
放射線学ジャーナルと言われても皆目見当がつかないので、とりあえず自分の論文の中で引用した文献のジャーナル名のチェックし、そのジャーナルをScimago Journal & Country RankのRadiologyのランキングで調べ、どのくらいのランクのジャーナルなのかをチェックした。すると、整形外科でだいたいいつも自分が論文を出しているようなジャーナルと同程度のランクのジャーナルと判明。そうか、それならここら辺のジャーナルをターゲットとしよう。Skeletal Radiologyはときどき耳にするジャーナルだが、投稿規定を見るとやたら指定が細かい。これだと書き直しが多くなるので断念。European Journal of Radiology Open(EJR Open)はオープンアクセスジャーナルだし、そこそこのインパクトファクターだし、投稿規定もうるさくないので、ここにしようか。

2023-4-30:MRI論文のフォーマット調整。文献番号を原稿に出てきた順にしたり(FAIはABC順)、各セクションに番号を振ったり。終わったので、EJR Openのサイトに行き提出。Elsevierが管理しているので見慣れた提出フォーマット。途中、Abstractの制限語数が250語と出てきた。これは提出要綱に書いていなかった(重要なことなのでちゃんと書いておいてほしい)。かなり大幅に削らないといけないので、削れるところをばっさりと削除。また、レビューアーの推薦も2人書かなければならない。書かないと先に進めないので、Maffulli先生の最近のアキレス腱付着部症の論文の共著者となっている先生から、見覚えのある名前の人を2人ピックアップ(Maffulli先生自身は、JOSRに提出する可能性がゼロではないので選ばなかった)。やっと最後までたどり着き、提出物がPDF化されたものを確認すると、画像が認識されていない。普通にJPEGなのに。これはちょっと時間がかかりそうなので、いったんログアウト。

2023-5-1:昨日に引き続き、提出したJPEGファイルが表示されない件に取り組み。ファイルのプロパティを見ながら、アクセス制限を削除したり、読み取り専用にしたり、TIFFファイルにしてみたりなどいろいろやったが、どれも無効。提出ファイルがまとめられた確認PDFファイルをよく見ると、それぞれの画像自体は表示はされないものの、”Click here to access/download Figure 1.jpg”などと表示されていて、それを押すと確かにFigure 1にアクセスできるので、このままでもよいのかもしれないが、”The image file is corrupt or invalid. You will need to convert your image file to another format or fix the current image, then re-submit it.”などと表示されるのが気持ち悪い。仕方ないので、図をすべてまとめたパワーポイントファイルを作り、それを提出ファイルに加えたところ、とりあえずすべての図が確認PDFファイルに表示された。これなら文句はないだろう。そのまま提出。
レントゲン論文の手直し。こちらもEJR Openに提出するという手もある。その際、論文を引用している著者を査読者に推薦し、その著者が査読することになったら、まさか自分の論文を引用している論文を無下にRejectにはできないだろう。

2023-5-2:査読コメントに基づいた原稿の追記。
この論文の問題点としては、この論文の売りとなるところがはっきりしない点にあるが、この点に関し、査読者3はいいヒントをくれていた。査読者3はこの論文を「controversial topicに関する面白い論文」と評していた。すなわち、「この論文はHaglund症候群とアキレス腱付着部症は関係あるのかないのかといったcontroversialなトピックに関する一つの証拠を提示している」という点に、この論文の良さを見出していた。だからこそ、査読者1,2がともに聞いてきた「この論文の臨床的意義は何か」ということに関して、査読者3は不問としたのだった!

2023-5-3:全体を通読しての見直し。

2023-5-4:European Journal of Radiology Open (EJR Open)を管轄しているElsevierからメール。査読が始まりましたと。予想外に早い!もしかしたら査読者の推薦がうまくいったか。
レントゲンの論文の方は、全体を通読しての見直しが終了。文献番号の振り直し。はじめはアキレス腱付着部症の大好きなMaffulli先生が編集長のJOSRに投稿するつもりだったが、自分の論文をMaffulli先生が気に入らなかった時の損失が大きいのでやめておくことに。代わりに、MRIの論文を出したEJR Openは提出しやすかったし、査読者の推薦システムがこちらに有利に働くようなので、この論文もこちらに出すことに。EJR Openのガイドラインに合わせて体裁を整えたのち、Elsevier Language Editing Servicesに提出。返却は5月11日予定。

2023-5-5:レントゲン論文をEJR Openに出すときに必要な、推薦する査読者選び。レントゲン論文で引用している文献のうち、2010年以降に出されたものの筆頭著者の論文数をPubMedで検索。5本以下の著者は外し、残ったのが6人。1人は34本とすごい人だったが、見たらユタ大学の准教授の先生だった。FAI編集長のSaltzman先生はユタ大学の教授なので、もしかするとこの先生がFAIでの査読者だった可能性もあるので除外。残りの5人は8~13本と自分と同程度なので、この人たちにしよう。
査読者の推薦システムは、最初は何だか胡散臭さを感じていたが、意外といいシステムかもしれない。整形外科といった専門ジャーナルのランキングで、100位以降になると、少しずつ資質に疑問のある査読者が入り混じってくるが、「この人なら自分の論文を正当に評価してくれそう」と思われる人をあらかじめ指名しておくことは、査読の質を保つために良いことかもしれない。

2023-5-7:MRIの論文がElsevierから返却されるまでヒマなので、CT論文に戻ることに。文献探し。
画像解析の論文の難点はモチベーションにある。自分の考えた術式だと何が何でも発表したいという熱意があるが、画像解析の論文はそれがやや低くなる。

2023-5-8:画像解析の論文のモチベーションがやや下がる原因としては、仮説・検証という手続きをきちんと踏んでいないことにもあると思った。MRIにしてもレントゲンにしても、画像を見てまとめながら後付けで何か論文のネタになることは見つからないかといったスタンスで取り組み、それでそれなりの形の論文になったが、CTでもそうやろうとしたところ、どうもそれではいい形にまとまりそうもなく、やる気がそがれていた。やはり、日常診療で出てきた疑問に答えを出すべく、仮説を立てそれを検証する、といったまっとうな手続きを踏まないと、モチベーションも上がらない。ではCT論文ではどうするか。すると、アキレス腱付着部症では、アキレス腱内の遊離骨がある場合、アキレス腱が菲薄化しているが、それがどのくらいひっ迫した状況なのか、というのが問題となる。よし、そのことを調べよう。

2023-5-11:昨日Elsevierから返却されていたレントゲン論文の英語校正のチェック。コメントや修正などをチェックしながら体裁を整え、提出用のファイルの作成。EJR Openに提出。publish後のジャーナルのツイッターに載せる200文字の文を提出時に入力しなければならないところが他のジャーナルと違うが、後は特に問題なし。

2023-5-14:レントゲン論文が”Under Review”に。おそらく査読者推薦制度が功を奏しているのだろう。ずいぶんとスムーズだ。

2023-5-15:どうもCTの計測でいい案が思い浮かばない。CTという3次元的な画像に対して、距離という1次元の指標を設定しにくいことにある(特にスライスの選び方を定めるのが難しい)。外反母趾のケースシリーズは調べたいことが固まりつつあるので、そちらを優先して、アキレス腱付着部症のCT論文は、EJR Openに出しているレントゲンやMRIに対する査読の反応を見ながら、新たなアイディアが浮かぶのを待とうか。もう少し考えよう。

2023-5-20:レントゲン、MRIの論文とも”Under Review”のまま。

2023-5-26:レントゲン、MRIの論文とも”Under Review”のまま。査読者1人は見つかったが、もうひとりが見つからないとかいうことか。

2023-6-5:2023-5-1にEJR Openに提出したMRI論文が”Required Reviews Completed”に。後から出したレントゲンの方は”Under Review”のまま。査読完了まで1カ月のスピードならまずまずか。

2023-6-6:EJR Openから査読結果の通知。結果はReject。査読者2の「このグレード分類は実用的でないように思える」というのがRejectの理由のよう。論文内のLimitationsの中で、「このグレードの分類は治療戦略に使われていない」「このグレード分類は臨床所見や病理学的所見によって正当性を立証されていない(not validated)」と自分で書いたことを逆手に取られて、「だから実用的でない」と解釈されてしまった。このLimitationsの記述は「だからこそこのグレード分類の正当性はあとから評価されるべきものだ」という意味で書いたのだが、そうは受け取られなかったようだ。
査読者1は「面白い論文」と評していたが、Major Revisionとして「なぜこの分類を考えたのか」と「どのようなプロセスでこの分類に至ったのか」の2点を指摘していた。一番目の「なぜ」の指摘に関しては、「今まで誰も考えたことがなかったから」というのが理由だ。査読者2のように「実用的でない分類はいらない」という意見もごもっともだが、「実用性が後から見出された」例などは世の中にざらにあるのだから、「誰も考えたことがないことを考える」ことそのものに意味があると思うのだが。0から1を作るのは難しいんですよ。二番目の「どのように」の指摘に関しては、「ずっとMRIの画像を見ているうちに分類が思い浮かんでしまった」ので、プロセスと言われても、「直観です」としか説明のしようがない。「全体をずっと見続けることで、その中にあるコアな特徴を浮き彫りにし、それらをどう組み合わせればよいかを考えて、全体をいくつかのシンプルな分類に区分けする」といった思考作業は大学受験の頃からずっとやってきたことで、もはや「直観」なのだ。
今回のRejectは、足底腱膜炎の内視鏡下骨棘切除の論文で、はじめ「傾向スコア・逆確率重みづけ法」を用いて書いたらRejectされたことに似ている。一人でずっと考えているうちに論文がより手の込んだものに変わっていくが、そうすると逆に論文としては理解されにくいものになってしまう。そもそもアキレス腱付着部症のMRI所見という物自体、ほとんど論文が発表されていない題材なのだから、シンプルに特徴を記述するだけのほうがいいのかもしれない。全部書き直しするか。

2023-6-6:Rejectされた論文の活用は2つある。ひとつは査読者2が指摘したこの論文の実用性についての記述(査読者1の指摘についての記述も)を追加した上で別のジャーナルに出すこと、もうひとつは、ただアキレス腱付着部症のMRIの特徴のみを記述した別の論文を作ること、である。出せるジャーナルが少なくなってきてどうしたものかと思っていたところ、メールにこの前査読を依頼されたが断った(手外科の論文だったため)Journal of Orthopedic Surgeryからのダイレクトメールを見て、なるほどこのレベルの一般整形外科ジャーナルに投稿する手が残っていたと気がついた。何が何でもアクセプトを急いでいる論文でもないので、いろいろ試してみよう。

2023-6-19:レントゲン論文は”Under Review”のまま。MRI論文もしばらく放っておいたので、そろそろやる気になってきた。意外と今はやることがある。このMRI論文の再提出、重度外反母趾の論文執筆、査読、来月のグループ病院内で行われる会での講演の準備、来年の国際学会のための英語の勉強など。

2023-6-25:レントゲン論文は”Under Review”のまま。

2023-11-1:ここ数カ月、英会話、学会発表、査読などによってなかなか論文に手が回らなかったが、英会話も軌道に乗り、学会発表も終わり、査読も今のところないので、やっと論文に戻ることができる。アキレス腱付着部症のMRIとレントゲン、外反母趾、12月締め切りの強剛母趾の4本をこの2カ月で何とかしよう。まずはEJR Openに出したままになっているレントゲン論文の確認。相変わらず”Under Review”のまま。「5月14日以来、ずっと”Under Review”のままですが、本当に進んでいるのですか?」とEJR Openにメール。向こうに非がある場合は下手(したて)に出るとつけあがるので、多少ぶしつけに言うに限る。MRI論文の方は久しぶりに読み直し、手直ししたほうが良いと思われるところにチェック。改めて読むと、これだけのアキレス腱付着部症のMRIの所見を調べた論文もレアだし、所見を整理してMRI分類を考え出したことも画期的なのに、あまりにそれを強調せずに書いているため、この論文のよさが伝わってこない。

2023-11-2:MRI論文の手直し。昨日問い合わせたレントゲン論文は、3人以上に査読依頼を出し、1人が承諾・その人の査読は終わっていると返事が来た。5カ月も待ってそれではダメだ。他の論文のめどが立ったら撤回して別のジャーナルに出そう。

2023-11-6:MRI論文の手直し。Foot & Ankle Specialistの投稿規定読み。これ以上査読でもたもたしてほしくないので、足の外科の専門家のたくさんいるジャーナルのほうがいい。論文を見ると、余計な解析が返って焦点をぼやかしていているので、思い切ってばっさりと切ることに。

2023-11-7:MRI論文を読んでいるうちに、このような表を作った方がいいとか、このような構成の方がわかりやすいとか色々アイディアが出てきたので、もう少し大幅な修正になりそう。

2024-1-5:強剛母趾のレビュー論文が終わったので、まずは放ったらかしになっていたMRI論文をやり、提出したらレントゲン論文をEJR Openから撤収し、別のジャーナルに投稿し直そう。

2024-1-9:MRI論文の読み直しと修正。

2024-1-10:MRI論文の修正。時間を経って読み直すと、いろいろと修正すべきところが見えてくる。特に所見とそれに基づいた分類については、よりすっきりとした提示の仕方が思い浮かぶようになっていた。

2024-1-11:MRI論文の修正。雑然とした所見の収集から、どうしてそのような分類を思いついたかの思考プロセスをうまく表現するのが難しい。

2024-1-12:Journal of Orthopedic Surgery and Research (JOSR), Journal of Foot and Ankle Research (JFAR), Foot and Ankle Specialist (FAS)の投稿規定の確認。JOSRは整形外科一般誌なので、なかなか査読者がつかない可能性あり(編集長がアキレス腱付着部症大好きなMaffulli先生なので、一発アクセプトの可能性はあり)。FASはアブストラクトの語数制限が厳しく(200語)舌足らずになる。一番合っているのがJFARか。論文の修正、加筆。

2024-1-13:MRI論文の修正・加筆。特になぜそのような分類を思いつくに至ったかを詳しく書き加えた。

2024-1-15:MRI論文の修正・加筆。一通りの修正はひとまず終了。

2024-1-16:MRI論文の推敲。カランレッスンで出てきた表現を思いつくなど、体系的に英文法を見直した成果がじわっと出ている気がする。

2024-1-17:Journal of Foot and Ankle Research (JFAR)の投稿規定を見ながらフォーマット調整。文献の並べ替え。図の説明の書き換え。ほとんど違う論文のようになってきた。全体の見直し。大丈夫そうなので、英語添削会社Enagoに提出。一度この論文はElsevierで校正してもらっているし、前回のEnagoで整形外科専門でAmerican Englishの校正者が見つかり、その人の添削はよかったので、その人を指名することに。

2024-1-19:添削が返却。見ると予想以上にしっかりと直されている。理不尽と思える修正はなく、どれもなるほどと思われる修正。これならいつでもEnagoでいいくらい。ただ修正が多すぎるので、明日改めて確認してからJFARに提出しよう。

2024-1-20:JFARに提出。論文提出のボタンが見当たらず、そこで悪戦苦闘。どうやら去年の12月31日をもって出版の親元がBMCからWileyへと変わったことによるようだ。まだホームページはBMCの作ったもののままだが、そのページからはもはや論文提出ボタンが消されているため、ページのどこを探してもなく、唯一「原稿は新しいサイトから提出できます」の一文の「新しいサイト」の言葉にリンクが貼ってあり、そこをクリックしないと提出できないと判明。なんとわかりにくい。提出サイト自体はFoot & Ankle Orthopedicsで見慣れたものなのでやりやすい。途中、査読者の推薦を書かなければならない箇所があり、これを書かないと先に進めない。引用文献から2人ピックアップして記入。以上2時間かかってやっと提出。とりあえず出せてめでたいから焼鳥屋に行ってくるか。

2024-1-24:提出した論文のCurrent StatusがWith Editorに。

2024-1-26:JFARの出版元のWileyからメール。JFARはオープンアクセスジャーナルなので、アクセプトされたら掲載料2800USDかかりますがいいですか、の内容。そんなのアクセプトされてから聞くのでいいのに。おそらく高すぎると文句を言われることもあるから送っているのだろう。

2024-2-8:JFARに出したMRI論文のCurrent StatusがWith EditorからUnder Reviewに。

2024-2-25:Under Reviewのまま。そろそろか。

2024-3-17:Under Reviewのまま。

2024-4-16:書いていた手持ちの論文はすべて提出したので、去年5月から放ったらかしにされているアキレス腱付着部症レントゲンの論文についてEJR Openにメール。論文日記を読み返したら、去年の11月1日にも問い合わせのメールを出していたよう。すっかり忘れていた。1週間以内に返事が返ってこないようなら、撤退のメールを出して、他のジャーナルに出そう。
ジャーナル発行元のElsevierからはすぐに返事のメール。謝罪とEditorに急かしておきますと。

2024-4-20:EJR Openの編集長からメール。査読コメントを送りますので改訂して提出してくださいと。遅れたことに対するコメントはなし。査読コメントを見ると6個で基本マイナーリビジョン。ただ変な英語で何を言っているのか分かりにくいものもある。リジェクトにはならなさそう。

2024-4-22:自分の論文で何を書いたか忘れていたので読み直し。European Journal of Radiology OpenはPubMedにもWeb of Scienceにも掲載されているし、Open Accessだし、Scimago journal rankingsでもQ2だし、1年近く放っておかれたにしても査読もそれほど厳しくないしで、割といい選択だったのではないかという気に。アクセプトがもうすぐなので、取りこぼしのないようにしないと。

2024-4-23:論文手直し。期日は5月10日。英語校正も考えたら2週間以内にしなければならない。
査読コメントの中に、この研究の重要性について書き直せ、というのがあった。これは痛いところをつかれた。そもそもこの研究は、ハグルンド病とアキレス腱付着部症が関係があるのかないのかという議論があるので、軽い気持ちで関係があるのかないのかを調べただけであって、それ以上の強い動機があって調べたわけではない。逆に、自分の論文の重要性を自分自身認識できていないからこそ、この論文に対する熱意も少なく、1年近く査読から返ってこなくても放っておけたわけだ。この論文の結果は科学にどう貢献するのだろう。後づけで重要性を見つけなければ。

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